今、日本人の6人に1人が貧困層である。貧困は様々な社会問題と密接に繋がっており、少年犯罪もその内の一つだ。
ここでは、国内外の貧困を取材し続けてきたノンフィクション作家・石井光太さんが貧困問題の構造を解き明かす『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』より一部を抜粋。
2015年2月に起きた「川崎中1男子生徒殺害事件」を例に挙げ、子供たちが道を踏み外してしまう心理について説明する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「川崎中1男子生徒殺害事件」少年グループの“もろい仲”
未成年の男の子が道を外れた時、売春の道へ進む女の子とは異なり、暴力の世界へと足を踏み入れることが多い。男の子の場合は、どうしてもグループを形成して力で他者を支配しようとするためだ。時にその暴力性は、傷害事件や殺人事件として社会の表に出てくることがある。
僕が取材をしてやりきれない気持ちになった一つの少年事件がある。2015年2月に、川崎市にある多摩川の河川敷で起きた上村遼太君殺害事件だ。
まず事件の概要を語ろう。
事件の加害者は、川崎区に暮らす17~18歳の少年A、B、Cの3人の男子だった。AとBはフィリピン人の母親と日本人のハーフで、Cは発達障害の傾向があった。
彼らは幼少期から育児放棄や親からの暴力を受け、小学校に上がった後はハーフであることなどを理由に同級生から差別やいじめを受けた。
やがて彼らは家や学校がいやになって不登校になり、近所のショッピングセンターにあるゲームセンターに通いはじめた。そこには他の不登校児もたくさん集まっていて、ゲームに熱中することでいやな現実を忘れ去ろうとしていた。
3人は中学を卒業した後、定時制高校や通信制高校へ進んだが、そこでもうまくやっていけずに中退したり、不登校になったりした。時間をもてあましたことで、彼らは飲酒、万引き、バイクの窃盗といった不良の真似事をしはじめる。
そんな彼らのグループに入ってきたのが、島根県の西ノ島からやってきた上村遼太だった。母親はシングルマザーで、一時期は生活保護を受けながら、5人の子供を育てていた。しかし、中学生になった頃から、家に母親の恋人が同居するようになった。遼太は多感な年齢だったこともあって家に居場所を見つけられず、ゲームセンターに出入りするようになり、年上のA、B、Cのグループと知り合った。
遼太はグループのメンバーとつるみ、万引きや泥棒に手を染め出した。家に居場所が見つけられない子供たち同士で「疑似家族」をつくり上げて孤独をまぎらわせていたのかもしれない。手に入れたお金はゲームセンターやカラオケでの遊びに使った。
とはいえ、彼らはしっかりとした友情でつながっているわけじゃなかった。毎日のように会っていながら、お互いを友達ではなく、「ヒマつぶしの相手」としか考えていなかった。オンラインゲームの対戦相手くらいの結びつきだった。
そんなもろい仲だったため、グループの人間関係はささいなことでいっぺんに崩壊することになる。