「貧困家庭に生まれ育った自分が『大学に進学したい』と思うのはいけないことなのでしょうか。奨学金を借りて大学に通っていますが、親が使い込んでしまって結局はアルバイトで生計を立てています。

 先月、体を壊してしまって働けなくなり、生活保護の相談に行ったところ、窓口で『まず大学を辞めてもらわないと……』と門前払いされてしまいました。自分を虐待してきた親から、ましてや奨学金に手を付けるような親から援助を受けられるはずがないのに、なぜ大学を志したからといって、生活保護を受けることができないのでしょうか。私は大学を諦めるしかないのでしょうか」

 以前、大学生の女性からこうした相談を受けたことがある。この女性がどうして私に相談をくれたかというと、私自身が過去に彼女とよく似た境遇にあったことを、著書『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-』やコラムなどで綴っていたためである。

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 彼女には、教育を受けることは憲法が定めるところの「健康で文化的な最低限度の生活」に含まれるであろうこと、そして門前払いをした窓口の担当者の対応は間違っており違法であること、虐待を受けていた事実や体を壊してアルバイトで生活費や学費を稼げない現状などが考慮されれば、生活保護を受給できる可能性があることを伝えたものの、結局それ以降、彼女からの連絡は一切途絶えてしまった。

写真はイメージです ©iStock.com

大学は「贅沢品」なのか?

「大学は贅沢品です」

 同じように、生活保護申請に訪れた窓口であしらわれたという大学生の話を聞いたことがある。虐待から逃れて大学に進学したものの、体を壊し、医療を受けるために生活保護の申請をしたところ、窓口で「大学は贅沢品です」と言われてしまった。救いの手を差し伸べられることもなく、結局入院することになって、とうとう大学退学を余儀なくされてしまったという。

「同じように夢を諦める経験をしてほしくない」という思いから、現状の生活保護の制度を変えるべく始めた署名キャンペーンでは、5万筆を超える賛同が集まった。しかし、現段階ではまだ制度の変更には至っていない。

「学費払えないなら教育を受ける権利ない」「自己責任」

 こうした話がインターネット上などで話題に出るたび、困窮している当事者たちには厳しい目が向けられる。

「そもそも学費を払えないなら教育を受ける権利なんかないだろ」

「どうしても勉強したければお金を貯めてから進学すれば良いだけ」

「なんでも人のせいにするな。大学生くらいの年齢になったら自己責任」