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「ヤなヤツ~!」竹内まりや&山下達郎夫妻 第一印象は最悪だった“サイン帳事件”と、「何かが起きた」スタジオの夜

「ヤなヤツ~!」竹内まりや&山下達郎夫妻 第一印象は最悪だった“サイン帳事件”と、「何かが起きた」スタジオの夜

山下達郎 2万字インタビュー #4

2022/11/13
note

——ずいぶんおませな情操教育ですね。

山下「そういうものの影響が大きい。僕には想像もつかないような、東京への思い入れがある。銀座や丸の内に対してとか。昭和の時代の地方出身の人が抱く東京への思いには、格別なものがあるんですよね。そういう意味で、日本って狭いようで広い。僕自身、そういう女性と身近に出会ったことがなかったので、新鮮な驚きがありました」

東京生まれ東京育ちの人間は知ったかぶりをするが…

——まりやさんは島根出身でいらっしゃいますよね。

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山下「島根県出雲市大社町。お父さんは地元の老舗旅館の四代目で、地元の町長を長年務められた、大変立派な方です」

——一方の達郎さんは東京・池袋育ち。家庭環境も真逆に見えますが、齟齬はなかったのでしょうか。

山下「一緒になってみたら、むしろ楽でした。東京というメガロポリスが生み出す女性というのは、自我が強い。東京は“見栄”の都市で、東京生まれ東京育ちの人間はとかく、知らないことを知らないと言えないんです。知ってるふりを装って、家に帰ってから辞書を引くとか(笑)。まあ、その知ったかぶりがお互いの切磋琢磨を生むという面もあるんだけど。

 うちの奥さんには、とにかくそういう見栄が全然なかった。知らないことを“知らない”と普通に言えるんです。それまでの人生、東京の人としか付き合ってなかったから、“知らない”と素直に口に出せる女性相手だと、こんなに楽になるものかと(笑)。一気にバリアが下がりました。

山下達郎さん

初対面でサインを求められるが、プロ意識で断る

 第一印象は、お互い最悪だったんですけどね。もはや語り草になってますけど、僕のところのレコード会社と契約することになったということで、デビュー前の彼女が渋谷のエピキュラスに連れて来られたことがあったんです。村上“ポンタ”(秀一)のセッションの日」

——伝説的なライヴですね。終了後、ポンタさんがお縄になったという(笑)。

山下「いや、お縄になったのはリハーサルを終えた直後で、本番にはいませんでした(笑)。それはともかく、そこにまりやが来て、“今度デビューすることになりました”って挨拶しに。その時に、サイン帳を持ってきて、サインしてくれと。それで僕はたしなめたんですよ。“これからデビューするような立場の人間が、同業者にサイン頼んだりしちゃいけない!”って」

——それは感じ悪いです(笑)。達郎さん、おいくつの時ですか。

山下「25だったかな。嫌いだったんですよ、そういうアマチュアリズム」

——まりやさんの反応は。

山下「ヤなヤツ~!って思ったって(笑)」

——で、サインはされなかった。

山下「しませんよ。もちろん」