「和田さんが死んじゃったから、今はどん底です。これまで本当に楽しく生きてきたけど、なんとか這い上がって、這い上がって、這い上がって、生きています」
2019年、パートナーの和田誠さんに先立たれた平野レミさん。最愛の人を失ったからこそ気づけた「料理の力」とは?(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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夢なんて持たなくていい
――料理愛好家として、これからのお話を聞きたいのですが。
レミ 夢なんて、絶対持っちゃいけない。私は、夢はキライなんです。抱負も、大キライ。だって、夢を持ったとして、叶わなかったらイヤだから。しかも、たいてい夢なんて叶わないんだから。
最近思うのは、その時、その時、与えられたことの中で、できそうなものをやるということ。ずっと続けて年齢を重ねると、振り返った時に「これが私の抱負だったんだ」とわかる。
――目の前の、求められているものに全力で応えていると、それが「夢」であり「抱負」になっている。
レミ それだけ! だから、夢は小さいの、私。大きな夢なんか何もなくて、与えられたことをコツコツ丁寧にやっていく。安くおいしくみんなに食べてもらえるレシピを考えて、その料理を誰かが作って、喜んでくれている人がいると思うと、すごく嬉しい。それだけで十分なんです。
そして食べてくれる人の表情が、答案用紙。おいしそうにしていたら、やったね!って。
「人にどう思われようと人と比較しない」
――とはいえ子供にとって、「大きくなったら何になるか」というのは鉄板の質問です。そういう時、どう考えていましたか。
レミ 子どもの頃は、ハッキリした夢はなくても、漠然と、みんなとは少し違う道を行くんじゃないかなとは思っていました。
――人は人。
レミ 人は人、自分は自分。人のことなんて、基本どうだっていいんです。無関心なの。悪い人間じゃないとは思うんだけど(笑)、私、冷たい人間かもしれない。
でも人のことを気にしても、いいことなんて何もないですよね。私は、どんな大金持ちやどんな美人に会ったとしても、平気。誰かを羨ましいと思ったことがありません。
――子どもの頃からそうですか?