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おばちゃんはこの道60年以上
こちらでそば屋をやる前は、おばちゃんは埼玉県蕨市で「そば新」という店をご主人と切り盛りしていたという。「その頃から数えれば60年以上そば屋をやっているのよ」と笑顔で話す。ご主人が亡くなってからはこちらの店一筋だというから本当に頭が下がる。
冷蔵庫からビニールに1人前ずつ入ったそばとうどんを取り出した。朝6時から自宅で製麺し、茹麺を作るという。店で生麺を茹でると時間がかかるので、腹ペこの学生さんたちは待っていられないからだとか。天ぷらも家で揚げてくる。働き者のおばちゃんである。
おつゆを1人前ごと鍋であたため、茹麺を湯通しして器に入れる。それにたぬきをかけて、さらに自宅で収穫した柚子を卸し金で削って振りかけて「たぬきそば」の完成だ。
「Bin丼」は鶏ムネ肉の天ぷら2つをつゆにくぐらせてご飯にのせて、タレをかけまわして完成である。風通しのいい席までおばちゃんが持ってきてくれた。
柚子香る上品なつゆの味にびっくり
さっそく「たぬきそば」のつゆをひとくち。下北半島の根昆布が素晴らしく利いた上品なつゆで驚いた。ムラサキのきれいなつゆである。埼玉県の大衆そばのつゆは濃すぎることがなく出汁が香りうまい。上品な味覚の持ち主が多いのだろう。
そばは茹で置きなので柔らかいのはご愛嬌だが、柚子の香りと相俟って一気に食べてしまった。