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「そろそろいなくなっても良いと思う…」詐欺被害を悲観して命を絶った22歳娘が母に遺した「遺書」と「優しさ」《投資詐欺の勧誘者を提訴》

「そろそろいなくなっても良いと思う…」詐欺被害を悲観して命を絶った22歳娘が母に遺した「遺書」と「優しさ」《投資詐欺の勧誘者を提訴》

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「アコム、アイフル、レイク、プロミスの順番で」と指示

 働き始めたばかりの穂野香さんにとって、150万円は大金だった。手持ちの金がないことをYに告げると、消費者金融に行ってはどうかとそそのかしてきた。「借金理由は引っ越しで」などと詳細な金策まで提示したという。

穂野香さんに投資話を持ちかけたY(読者提供)

 急かされた穂野香さんは8月31日、大阪府豊中市のマクドナルドでYとOに会い、ジェンコの運用の説明や実績があって安心であることなどをiPadで説明され、再び「借金をしてでも投資をすべき」と猛烈に迫られた。そして翌1日、Yらに言われるがままに消費者金融で150万円を借り入れ、全額を渡してしまった。

 Yの供述調書には、「アコム、アイフル、レイク、プロミスの順番で午前中には全社終わらせて欲しい!」と穂野香さんに提案した、生々しいやり取りまでもが残っている。母の佐永子さんは振り返る。

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「私に詐欺にあったことを相談してくれたのは、金を払った2週間後でした。娘は家にいても全然笑わなかったり、『どうしたん?』と聞いても、『大丈夫』と明らかに大丈夫ではなさそうな顔で言うんです。1人で解決しようと消費者センターに行ったり、ジェンコ側にメッセージを送ったりもしていたようです。この頃には既に詐欺だと気づいていたようで、私に話す言葉は『ジェンコ』だの『ポンジスキーム』だのと知らない言葉ばかり。ネットで調べましたが、私も詳しいわけではなく、詐欺かどうかも最初はよくわかりませんでした」

気丈に振る舞い、他の被害者を気遣って

 穂野香さんは多額の借金を抱えた苦しみを抱えながらも、家では気丈に振る舞い、職場に通い続けたという。だが、奨学金の返済も控え、金銭苦が確実に彼女の心を蝕んでいった。9月26日にはメンタルクリニックを訪れ、うつ状態の診断を受けている。この際、医師には「自分の他にも被害者がたくさんいる」と告げていたこともわかっている。苦しみの中でなお他者を気遣う姿も見せていた。

優しい性格だったという穂野香さん(遺族提供)

 うつという診断を受けた穂野香さんを決定的な絶望に追い込む出来事が起きたのはその4日後だった。

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