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「相手の気持ちを考える子で、悪口なんか言わない優しい子でした。私が風邪をひいたら『大丈夫?』とか『何か手伝うから何でも言ってね』と言ってくれました。保育所にいた時からよく手紙を書いてくれて、中学生で反抗期に入って喧嘩した後に反省した内容の手紙を書いてくれたり、社会人になっても私の誕生日に手紙を添えてプレゼントをくれたこともありました。今も部屋に何通も手紙が残っています」

母親思いの娘でもあった(遺族提供)

「ごめんなさい。本当にありがとう。」母に宛てた最後の手紙

 穂野香さんが佐永子さんに宛て書いた最後の手紙は、自殺したホテルで見つかった遺書だった。

《お母さんへ 22年間、ずっと私を育ててくれてありがとう。この22年間、生きていて大変なことが沢山あったけどとても楽しかったです。今回の投資詐欺の件で沢山迷惑をかけ、心配をかけてしまって本当にごめんなさい。それ以外にも、きっと色んな心配をかけ続けてきたと思います。

 

 昔から人一倍考え込みやすい性格だったので、「そんなことで悩む?」というようなことでもよく悩んで心配させていたと思います。こんなくよくよした娘のことを大切に想ってくれて本当にありがとう。奨学金は保証人になってもらっているのに、その支払いも終わっていないままこんなことになってごめんね。最後まで迷惑をかけ続けていなくなってしまう親不孝な娘でごめんね。

 

 これ以上生きていたらきっと周りに迷惑をかけつづけてしまうと昔から何度か思っていました。最近はずっと何を考えても頭の隅から死ぬことが抜けずにいました。私は色んな人に迷惑をかけすぎました。もうそろそろいなくなっても良いと思います。仕事にいっていても、モチベーションが低下すればすぐ休み、友達のことは想いやっているのは上辺だけで、実際は全然大切にできていなくて、もう何人もの友達を傷つけてきたのか分かりません。今まで付き合ってくれた人達のことも大切にできていませんでした。

 

 もう十分、迷惑をかけきったと思います。だから、自分で人生を終わりにします。ごめんなさい。本当にありがとう。服とかは売ってね。多少のお金にしかならんかもやけど。 二〇二〇年十月一日 川上穂野香》

 最後まで母や周囲への気遣いを忘れなかった穂野香さん。死の瞬間まで自らを苛みつづけたその気持ちが、怪しい投資を持ちかけた男たちにわかるだろうか。