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 西田演じる道三は尾張にいずれ攻め込むつもりでおり、その手始めとして娘の濃姫(中谷美紀)を信長に嫁がせる。その際、道三は、信長が世間で噂されるとおり本当にうつけであれば殺せと言って、短刀を彼女に渡していた。しかし、濃姫は、信長と接するうち、しだいに彼に惹かれていく。

 その後、道三が信長に面会を求めてくると彼女は、父は夫を殺すつもりだと勘づき、信長に例の短刀を渡して見送った。濃姫役の中谷美紀は当時22歳で、若手女優として注目されつつあったころだが、勝ち気な役柄にハマっていた。本作では役そのままで語りも務めている。

木村拓哉 ©文藝春秋

木村が見せた「うつけぶり」

 道三と信長の面会は、道三が事前に娘婿の姿を確認しておこうと、彼の通る道沿いの小屋に隠れ、窓からうかがったというエピソードとともによく知られる。このドラマでも後半、ひとつの見せ場としてこの様子が描かれる。

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 このときの信長の隊列は、例の300丁の鉄砲をはじめ多くの武器を持参しており、道三を驚かせるが、当の信長はといえば、いつもの小汚い格好で馬に後ろ向きにまたがり、食べていた干し柿の種を口から飛ばすという“うつけぶり”であった。しかし、面会の場では一転して正装で現れ、道三を再度驚かせる。会っているあいだ2人はほとんど言葉を交わさなかったが、道三は信長をすっかり気に入り、彼が帰ったあとで、家臣の土岐(明智)光秀(渡辺いっけい)や堀田道空(岩崎ひろし)に自分が死んだら信長に仕えるがよいと勧めるほどだった。

 本作では、信長と濃姫・道三の関係とあわせ、弟の信行との関係が大きな軸となって物語が展開される。信長とは対照的に信行は内向的で、兄に羨望を抱いていたが、それはやがて嫉妬となり、さらには憎しみへと変わっていった。母の土田御前や家臣の林通勝(津嘉山正種)も彼の反逆を後押しする。信長が道三と会った直後には、ついに兄弟が互いに兵を率いて争うことになった。