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信長と木村のイメージが一気に重なった場面は…

 この戦いは結局、信行の敗北に終わる。彼は一旦は信長に許されるも、兄弟が二人きりで向き合ったとき、いきなり刀で斬りかかり、信長から逆に討たれてしまう。それでも信長は弟の名誉のため、彼が謀反を詫びて切腹したのだとほかの者たちに説明するのだった。

 劇中では、信長と信行が争ったいわゆる「稲生の合戦」が、道三との会見の直後に起こったかのように描かれていたが、実際にはこの戦いは信長が道三と会ってから3年後の1556年のできごとであり、信行が殺害されたのはさらにその2年後である。しかも信長は信行を直接手にかけたわけではない。このようにかなり史実が改変されているが、それも愛憎入り混じった兄弟の関係を強調するためだったのだろう。

2023年1月公開予定の映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』(映画公式サイトより)

 ライバルであった信行を心ならずも討ち果たしたのを機に、信長は天下を目指すと身内の者たちに宣言する。これをラストとして、ドラマはその後の彼の活躍をほのめかしながら、濃姫の「その孤独な心の奥に、時代を変え、戦のない世界を望む気持ちがあったことは何人の人が知っていたでしょうか」との語りで締めくくられる。弟を殺したことと天下を目指すことがどう結びつくのか、いまひとつわかりにくいが、木村拓哉が演じるとなぜか納得させられてしまうから不思議だ。

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 粗削りではあるが、果敢に行動する若き日の信長は、やはりこの時期の木村拓哉に見事にハマっていた。そのことを筆者が一番感じたのは、ドラマの前半、信長が手兵たちに鉄砲の撃ち方を指導するシーンだ。このとき、父・信秀が見に来て、「田舎のガキだと聞いていたが、なかなかいい手兵じゃないか」と褒めたところ、信長が「俺と同じ、自分知らずなだけだ。自分を知っちゃったやつは先に行けないだろう」とぶっきらぼうに言うのを聞いて、信長と木村のイメージが一気に重なり合った。

木村は今年50歳、信長の享年をすでに超え…

 このドラマが放送されて24年、木村拓哉は今月13日には50歳となる。まもなく公開される『THE LEGEND & BUTTERFLY』では、信長が最期を迎える本能寺の変まで描かれるという。実年齢でいえば、木村は信長の享年(数え年で49)をすでに超え、ここ最近はドラマ『教場』で警察学校の教官を白髪頭で演じるなど、新たなイメージを創出しつつある。そのなかで再度演じる信長が一体どんなものになるのか、公開を楽しみに待ちたい。