日本は「車にかかる税金」が高すぎると言われる。
日本自動車連盟(JAF)によれば、自動車の取得・保有にかかる税金は「欧米諸国に比べて2.2倍から31倍」(消費税を除く)にも上るという。インパクトの大きな数字に、「これでは若者の車離れも当然だ」と、政府を批判したい気持ちに駆られるかもしれない。
しかし本当に、税金をはじめとする維持費は「車を持てないほど高い」のだろうか。はっきりと維持費を計算しないまま、漠然と「車はお金がかかるから」と、端から所有を諦めてしまっている若者も少なくないのではないか。実際のところ、自動車にかかる維持費はどのくらいで、どれほど私たちの暮らしを圧迫するのだろう。東京都心部やその近郊で車を維持する際の収支状況を分析してみたい。
※厚生労働省による賃金構造基本統計調査や、総務省統計局の家計調査の数値をもとに、平均的な収入を有する若者をモデルケースとして設定した
年収320万円、東京郊外に一人暮らしの20代女性の場合
まずは東京都心部から電車で40分~50分のエリアで一人暮らしをする20代前半の女性が、車を購入するケースについて見てみよう。2021年の賃金構造基本統計調査によれば、東京都で働く20歳~24歳の女性の平均年収は329万円ほど。
これに近いモデルを設計すると、月収は23万円、ボーナスは年2回、各1ヶ月分の支給とすれば、年収は322万円ほどになる。月の手取り額は17万円強になるだろう。
次に、2021年の家計調査の結果をふまえ、支出面を検討してみる。34歳以下の女性単身世帯(勤労者)における平均消費支出は約16万円。自動車関連の費用を除くと約15.1万円になるので、ここでも自動車関連費用以外の支出を約15万円と仮定しておく。
なお、同平均消費支出では住居関連の費用が約3.6万円だが、ここでは東京23区外の多摩エリアに1Kアパートを借りる想定で、家賃5.5万円を計上した。そのうえで支出が15万円となるよう調整しているので、住居と自動車以外の支出においては平均値から2万円近く安く済ませているモデルということになる。
ここでたとえば、80万円ほどの中古軽自動車を頭金なしの5年ローンで買った場合、月々の返済額は1.5万円になる。アパートの駐車場を月8000円、任意保険は車両保険なしで月5000円としよう。
さらに、自動車税と重量税、自賠責保険分を月で割ると、およそ2000円。ガソリン代については月間の走行距離を500kmと想定し、4500円としておく。加えて、半年ごとのオイル交換と、4年ごとのタイヤ交換・バッテリー交換、12ヶ月ごとの法定点検費用も月で割り、これを約1800円として計上する。
ここまでの自動車関連費用をすべて合算すると、月に3.6万円が必要だ。支出の合計は18万円を超え、手取り額を1万円ほどオーバーする。ボーナスをアテにすれば生活はできようが、車を維持するために「ボーナスありき」の生活をするかどうかは悩みどころである。