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平場にいる自民党議員がおおいに沸いて結束したワケ

 一事が万事こんな感じなので、岸田さんから「官邸としてこういう方向性でやるんだ」という指針が明確には出ないため、必然的に今回のような総合経済対策において推進役となるのは与党自民党の政調会長室であり政調全体会議になってくるわけです。

 たまたま、その政調会長が萩生田光一さんであったため、政策面においては割と日本人にとって良かった面はあります。統一教会問題では萩生田光一さんはマスコミに煽られた世論にも批判をされ、鈴木エイトさんや藤倉善郎さん、紀藤正樹さんあたりにほぼ毎日ボロクソに叩かれております。しかし、落選経験もある萩生田さんは政策面での勘所が鋭く、政策推進する力量については前任の下村博文さんとは比べ物にならないぐらい優秀であるため、政策の仕切りという点では推進力のない岸田さんとは完全な補完関係にあります。

自民党の萩生田光一政調会長 ©文藝春秋

 ここで、平場において会議中に岸田さんから電話がかかってきた萩生田さんが、財務省を悪者にして「(政治家がやっている平場での結論を待たず財務省が総理と握ろうとするやり方は)禁じ手だ」と喝破して、平場にいる自民党議員がおおいに沸いて結束するのは、岸田政権における象徴的な出来事のように感じます。

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 幹事長の茂木敏充さんが本来の力を発揮できる環境にない中、指導力に乏しい官邸の主・岸田さんが、統一教会問題でズブズブすぎて袋叩きになってるけど政策推進力も議員を束ねる力量もある叩き上げの政調会長・萩生田光一さんとホットラインで繋がって、ギリギリのところで官邸と自民党のパイプで補正予算を何とか段取るというのは、支持率低迷中の岸田政権が生み出した微妙なWIN-WIN構造とも言えます。

 もともと9月中旬、萩生田光一さんも国民の賃上げを条件に30兆円規模の経済対策が必要だと表明し、また、これに乗っかる形で参院幹事長の世耕弘成さんが今回の補正予算に関しては大盤振る舞いを前提として「30兆円規模が発射台だ」としていました。ただ、一方で財政規律やバラマキ後のモルヒネ経済批判をする自民党内の慎重論も根強かったため、これを正面突破で押し切る口実となったのが岸田さんからの電話であり、それを受けた萩生田さんの「禁じ手」発言であり、特に落ち度もないのに悪者にされた財務省なのだという雰囲気で見ております。