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決断しない岸田官邸VSバラマキたい自民党本部、禁じ手飛び交う“仁義なき戦い”

そして特に悪いことをしていないのに悪者にされる財務省

2022/11/10
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岸田さんが予定を優先させざるを得なかった“大物”

 しかし、実際に起きていたことは、官邸と自民党との間での調整がなされている最中に「財務省が横やりを入れた」形で金額を被せてきたわけではありませんでした。

 本来なら自民党の平場の会議が終わった後で、党で話し合われた金額を受けて岸田さんが官邸で財務大臣の鈴木俊一さんと2次補正予算について議論するべきでした。しかし、実はその直後に滑り込んで入ってきた予定を岸田さんは優先させざるを得なかったため、前倒しで、平場の会議をやっている時間帯に財務大臣の鈴木さんが総理大臣の岸田さんと面談していたという話になります。

 その面談する相手こそ、俺たちの読売新聞代表取締役主筆として戦後政治に名高い超大物ジャーナリスト・渡邉恒雄さんでした。首相動静にもある通り、岸田さんは我らがナベツネ先生との面談の予定が入ったので、財務大臣・鈴木さんと財務省との面談を前倒しにした後、そそくさと大手町の読売本社に車を飛ばしたことになります。

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首相動静(10月26日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022102600284&g=pol

説明していただけなのに…とばっちりを受けた財務省

 とばっちりとなったのは、萩生田さんに「禁じ手だ」と名指しで怒られた財務省主計局長の新川浩嗣さんです。特に落ち度もないのに悪者にされて可哀想でやんす。呼ばれたので財務大臣と一緒に総理とうっかり面談したら、「自民党本部の平場の会議の前に総理に経済対策の予算規模で握るとは何事か」と怒られが発生したのであります。

 財務大臣との会議に同席していたのは、菅政権で首相秘書官を担っていた寺岡光博さんと前田努さんです。積み上げ予算として書類が回覧されていた25.1兆円の内容についての詰めの説明をしていただけなのに、財務省が陰謀をめぐらして禁じ手を使ったという話になっていたため、困惑が広がりました。

支持率の低下が止まらない岸田文雄首相 ©文藝春秋

 というのも、岸田官邸は政策調整の機能がいまだ十全とは言える状態になく、支持率低迷の原因のひとつになっている「決断のできなさ」は、オールジャンルで仕事を采配する木原誠二さんら数少ない官邸要人にやるべきことが集中しすぎて過積載となり沈没していることが大きな原因とも言えます。官邸で活躍する政治家も官僚も、みんなまずまず仕事ができる人なのに、いかんせん少ない人数に多くの仕事が振ってくるため過積載になり、仕事が渋滞しているのです。

 なにぶん、岸田さんはあまりはっきりと「これをやれ」とは言わないので、周辺が気を回してあれこれ政策調整をして整理をしたうえで「岸田さんこうなりました」と報告すると、実は岸田さんがこだわっている政策は別のところにあり「え、そっちが岸田さん的な本丸だったの」ということが繰り返されています。良くも悪くもシンプルに「おのれら、これをやれや」と明確な指示を出して、ツインターボのような逃げ切り型政策推進をしていた菅義偉さんと和泉洋人さんのコンビとは隔世の感があります。