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補正予算、2年で60兆円も突っ込んで大丈夫?

 最近になって、今年の税収が68兆円と過去最高になった、という話がありました。過去最大の税収になったんだから税金下げろや、という国民の声もこだまする割に、政府があまりこの点を触れないのは、単純に「去年も補正予算として過去最大の35兆9,895億円を支出していた」からに他なりません。言い方として適切かどうかわかりませんが、昨年の税収が67兆円で、約1兆円の税収を増やすのに35兆円を超える補正予算をぶっ込んでいることを考えると、今回の補正予算も約29兆円で何年かけて財政的に取り返すつもりなのかという出口戦略の話はどうしても出ます。

 ここで「インフレになれば問題ない」とか「国家の借金は国民の利益」とか「税は財源ではない」などのMMTやリフレ派的な珍説がたくさん跋扈する一方、コロナ禍の経済で痛んだカンフル剤として2年で60兆円も突っ込んで大丈夫なのかという議論はどこかでしておく必要はあるかもしれません。なんせ、基軸通貨でもない日本円ベースで2022年の貿易赤字は通期で20兆円ペースであり、経常収支がもしもマイナスになるようなことがあれば、構造的に円安基調から脱却することができず、輸入が増えるほどに給与に反映されないコストアップインフレがいま以上に続くことになります。

国民生活に打撃を与える貿易赤字と円安の原因は…

 これらの国民生活に打撃を与える貿易赤字と円安の大きな原因のひとつは、述べた通り反原発運動でエネルギー調達費用が増大していることであり、この問題で政治が無策であり続けたことのツケを国民が払っていることに他なりません。もちろん、使用済み核燃料をどうするんだとか、本当に事故が起きない安心な原発を稼働させられるのかなどの論点はあります。それでも、エネルギー効率の良い新鋭の原子力発電所や火力発電所への置き換えも進めずに楽観的な再生エネルギーシフトを続けたことが、結果的に国民を貧しくしていることは間違いありません。

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 政治面で言えば、国民から不人気になりつつある岸田さんが頼れるまともな政治家が、統一教会問題で面倒なことになってしまった萩生田さんぐらいしかいなくなっている、ということにも危機感を覚えなければならないと思います。衰退途上なのにいままで通りの裕福な生活をしたいという国民が生活レベルの低下を受け入れられないと、このまま日本は沈没してしまうのではないかなという気持ちになりますね。