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デーモン閣下が発した「意味深な警告」

 聖飢魔Ⅱも、デビュー35周年となる2020年に再集結したが、予定していた大黒ミサがコロナ禍により行えず、代わってビデオ黒ミサと生トークツアーを「特別給付悪魔」と称して敢行する。それまで黒ミサのたびに、信者に対しさまざまな警鐘を与えてきた閣下だが、このときのツアーでは、新たな警告として「我々を好きになりすぎるな」という意味深長なメッセージを残した。

 後日、これについて問われた閣下は、コロナ禍前後の心境の変化を打ち明けている。再集結の話が出たときに、構成員の世仮の肉体的な理由からその次の40周年がやれるかどうかはわからないという話になったという。その後のコロナ禍では、思わぬ人が亡くなったというニュースが続き、閣下自身もコロナではないが体調不良からレギュラー番組の生放送をを早退するという経験もした。ここから、いつ誰がぽっくり逝くかわからないぞという思いが募っていったという。

(左から)デーモン閣下、阿川佐和子 ©文藝春秋

「我々を好きになりすぎるな」という言葉には、事前にそう心がけておけば、もし自分たちがいなくなっても、心の穴が大きくなりすぎずに済むぞという裏の意味があったのだ(山田晋也『聖飢魔Ⅱ読物教典 真・聖魔伝』シンコーミュージック・エンタテイメント)。現在の日本人の平均寿命からすれば、還暦は老年期のとば口にすぎない。それでも悪魔である閣下には、死について人間以上に意識してしまうところがあるのだろうか。

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 そんなふうに不安感をほのめかしつつも、聖飢魔Ⅱはコロナ禍が長引いたため、昨年と今年と2度にわたり再集結の延長を宣言した。この9月にはじつに23年ぶりとなる新譜大教典『BLOODIEST』をリリースし、さらに先月からは本来予定していた大黒ミサツアーをようやく実現、目下、来年2月の東京・代々木第一体育館のファイナルまで全国各地をまわっているところである。

 かつてヘヴィメタ業界から黙殺された聖飢魔Ⅱだが、いまや日本のヘヴィメタルを代表する存在として専門誌がこぞって表紙にとりあげている。デーモン閣下も、そのキャラクターが世間に違和感なく受け入れられて久しい。何事も長く続けた者勝ちということだろう。近年では動画投稿サイトで昔の映像を観て信者になった若い世代も多いという。そんな信者たちのためにも、今後も息長く活動を続けてほしいものである。