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子育て環境のバックアップ

 理由は行政による子育て環境のバックアップである。市では子育て世帯に焦点を当て、産後育児サポートとして「子育てヘルプサービス事業」を展開。ホームヘルパーを派遣している。また市内数か所に子育て支援センターを開設。子育てコンシェルジュを設けて、子育てにかかわる各種相談に対応する体制を整えている。

 こうした行政サービスを支えるのが実はデータセンターをはじめとした大企業が続々と印西市に拠点を構えたことにある。企業が拠点を置くということは自治体にとっては税収が増えることになる。住民が増えれば住民税も確かに増えるがいっぽうで、社会インフラの充実など住民向けの行政サービスコストも増えることになる。ところが雇用需要こそ少ないものの、データセンターや物流施設が集積することは、税収が増えて行政サービスなどの負担増が少ない、自治体にとってはまさに「打ち出の小づち」なのである。

写真はイメージ ©iStock.com

 こうして得ることができた潤沢な税金を子育て支援をはじめとした各種行政サービスの充実に充てることができ、それが人気の秘密となっているのだ。豊かな税収は子育て支援だけにとどまらない。学校教育内容の充実、あるいは給食などの質、公園の整備、公共施設や介護サービスなど、住民の年代に応じて様々なサービスの展開が行いやすくなるなど良い効果があるのだ。

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新たな方程式の出現

 以前は工業団地などを造成して大企業の工場を集め、税収を確保して自治体を運営するのが成功の方程式ともいわれたが、現代は、こうしたデータセンターなどデジタル機器の置き場といった、ほぼ無人の建物を呼ぶことによって、自治体にとっては税収確保と、費用の極小化を図り、住民サービスを充実させる新たな方程式の出現ともいえよう。

 以前に聞いた知人の話だ。彼は北海道の古宇郡泊村の隣の村に住んでいたそうだが、泊村に原子力発電所が建設されたとき、自分の住んでいる村から一歩泊村に入った瞬間、道路は広くてきれいになり、村の公共施設もどんどん整備されてそれがとても羨ましかった、自分たちの村にはお金が全く落ちなかったと述懐していた。泊村の隣村の話として、知人の受け止めがなんだか滑稽にも感じたが、印西市の戦略はまさに令和新時代の成長の街の証なのである。