――YouTubeやTikTokでは、車椅子ユーザー目線での海外渡航の様子をたくさん配信されていましたよね。実際にイタリアのバリアフリーの状況はいかがでしたか。
海 街中で「何か手伝おうか?」と声をかけてくれる人が多いなと感じました。それにインフラがすごく整備されているから、ある意味「全部ひとりで完結できる」ようにもなっているんです。
例えば地下鉄の階段の上り下りは、自動昇降機がついていてセルフで操作できるようになっている。でも、私は操作方法がわからないから、結局駅員さんに助けてもらいました。どちらが良い・悪いではなく、文化の違いを肌で感じて勉強になった出来事でしたね。
「作り手」になる夢も諦めない
――最後に、これから挑戦したいことをお聞かせください。
海 私が活動を通して目指していることは、大きくふたつあります。ひとつは、「障害を持つ方の“人生の選択肢”を増やす」こと。
障害を抱える方で、将来の夢に「アイドル」や「モデル」を掲げる人はあまりいません。それは障害を理由に諦めているというより、過去に前例がないゆえに、選択肢や可能性が狭まっているだけだと思うんです。私が「ロールモデル」として道を作ることで、選択肢の幅を広げるきっかけになれたら嬉しいですね。
――もうひとつは?
海 「障害者と健常者の壁をエンタメの力で壊す」ことです。障害者と健常者の間にある壁は、段差などの「ハード面」だけではありません。だから私の活動を通して、もっと障害を持つ方の存在を身近に感じてもらえるように、「ハート(心)面」でも壁を壊したいと思っています。
例えば街中で「手伝いましょうか」と声をかけていただくのもありがたいのですが、「いつも見ています」「応援しています」と、あくまでひとりのモデルとして声をかけてくださるのも嬉しい。
実際、そういうコミュニケーションをしてくれるファンの方々が増えているので、少しずつ「葦原海」自身を見てもらえるようになってきたのかなと感じます。そうした意味では、ようやく“スタートライン”に立てたと思っています。
――モデルとしての挑戦はまだ始まったばかりだと。
海 今はモデルとして表舞台に立っていますが、「作り手側」にまわりたいという小さな頃からの夢も諦めていません。かつて憧れていた大道具さんにはなれないかもしれないけれど、別の形の「作り手」として、「障害者と健常者の壁」を壊していきたいです。
撮影=三宅史郎/文藝春秋
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