X氏はA子さんの父親を「うつ病」と診断すると、A子さんと一緒に帰っていったという。そして3日後の8月13日頃、母親にA子さんから電話がかかってきた。
「発熱して体調が悪い、と連絡が来ました。A子は『実家に帰って点滴を打ちたい』と言っていましたが、主人の状態が良くなくて私も手が離せず、かといって自分で運転できる状況でもなさそうだと思い、『そっちでしっかり休みなさい』と言ってしまったんです。A子が遺体で見つかる前日の15日にも電話で『限界を超えている。人生の中でこんなに泣かされることはない。常に先生から叱られている』と泣いていました。『もう辞めていいよ』と言っても、『悔しい』と言うばかりで、それが最後の会話です。あの時無理にでも迎えに行けば違った結果になっていたのでしょうか……」(同前)
そして8月16日の朝、A子さんはクリニックに出勤しなかった。連絡が繋がらないA子さんを心配した同僚のY子さんとX氏が自宅へ向かうと、A子さんが首を吊って変わり果てた姿で発見された。
「X氏がぼそっと『バカだなあ』と」
生前からA子さんと親しく、第一発見者となったY子さんが当日の様子を振り返る。
「A子さんは前日もLINEで『死んだ方がましだ』『死にたい気持ちは変わらない』と話していました。16日になって連絡がつかず私は心配で仕方なかったのですが、X氏は『放っておいていい、あいつに死ぬ勇気はない』と取り合いませんでした。でも私が警察に通報するというと、しぶしぶ重い腰をあげました。玄関は鍵がかかっていましたが、部屋の小さい窓が開いていて、部屋の中に変わり果てたA子さんの姿が見えて……。その後のことは気が動転していてほとんど覚えていないのですが、X氏がぼそっと『バカだなあ』と言ったことだけは妙に鮮明に記憶に残っています」
Y子さんはA子さんを心配して、15日の夜にもA子さんの自宅を訪れたが、電気が消えているのを見て家へ戻ったという。A子さんはY子さんに対して苦しい胸の内を話してはいたが、X氏との不倫関係について自分から話すことはなかった。
「ただA子さんとX氏が不倫関係にあるのはみんな知っていました。A子さんがパジャマ姿で診察室から出てくることもありましたし。知り合った頃は明るく仕事ができる人という印象でしたが、最後は完全に鬱状態でミスも増え、怒りっぽくなっていました。X氏のA子さんに対するパワハラはエスカレートする一方で、どなりつける大きな声が診察室の外まで聞こえていました。A子さんは仕事が終わっても涙が止まらないこともありました。かなり強い薬を飲んでいて『それは本当に飲む必要があるの』と聞いたこともあったんですが……」(A子さんの同僚のY子さん)