深刻なマンガ業界のアシスタント不足
――最近の作品だと『ダンダダン』(龍幸伸)はいかがですか?
アッツー 少年漫画系の作家志望で『ダンダダン』の精密な背景描写に憧れがある子は増えてますね。あの作品も独特なトーンの使い方をするんですよ。うちの現場でも「ここは『ダンダダン』のトーンで」って指示出ししてます(笑)。それくらい個性的な絵です。
――風景画が得意で、将来は漫画を仕事にしたいと考えている若い子はたくさんいると思います。
アッツー いますね。結局アシスタントという言葉のせいで、どうしても特定の漫画家さんの弟子になるイメージができてしまっているんです。そうじゃなく“これは背景作画というお仕事です”という認識がもっと広がればいいなと思っているんですけど、そもそも前提として漫画家のアシスタントになりたいと思う若い子が圧倒的に少ないんです。みんな下積みなんかせずに漫画家の先生になりたいから(笑)。
だけどそうやってプロになった人に話を聞くと、みんなアシスタントやっとけばよかったって言うんです。理由として、お金の払い方が分からない。どのくらいスタッフを使っていいか分からなくて苦労しているので、商業作家になりたいなら社会経験として1回でもアシスタントに入っておいたほうがいいと思います。
今、漫画業界はアシスタント不足が結構深刻なんです。うまく描けなくても大丈夫。ちゃんと教えるから長く続けられる子はうちにおいでって感じで募集をかけて。うちにいるスタッフの8割はアシスタント経験ゼロの子なんです。教えるとすごくうまくなるので。
――現在スタジオアッツーが手がけている作品にはどんなものがありますか?
アッツー 最近発表になったものだと『晴天のデルタブイ』(原作:かっぴー、ネーム:フウワイ、線画:かもとも、着色:ししゃも、背景:スタジオアッツー 編集:ナンバーナイン)という民間ロケット開発を描いた作品が進行中です。堀江貴文さんが関わっていることでも話題になりました。
それから『NARUTO-ナルト-』のスピンオフ作品『NARUTO-ナルト- 木ノ葉新伝 湯煙忍法帖』(原作:岸本斉史/ひなたしょう 漫画:斎夏生)も『少年ジャンプ+』にて連載が始まりました。他にも準備中の作品がたくさんあって、まだまだスタッフが足りない状況です。
――最後にアッツーさん自身の夢をお聞かせください。
アッツー 僕の個展はいつかやりたいと思っています。これまで描いてきた背景画の原稿は全部残っているので。それもまたアナログの強みですね。
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