背景も革新的だった大友克洋の『童夢』と『AKIRA』
――逆に、コスト度外視で背景を緻密に描き込んだ作品が大友克洋先生の『童夢』や『AKIRA』ですね。
アッツー 『童夢』なんて完全に背景が主役ですよね。あの作品をきっかけに見開きを背景だけで人物は小さく描く、かっこいい引きの絵が増えた印象があります。大友先生の『童夢』や『AKIRA』は僕も影響を受けました。
――他にもアッツーさんご自身がこれまで影響を受けてきた作品は?
アッツー 浦沢直樹先生の『MONSTER』や田島昭宇先生の『多重人格探偵サイコ』(原作:大塚英志)などは、めちゃくちゃ模写した作品です。あと、王道過ぎて番組で紹介しませんでしたが、ほとんどの絵描きは『ドラゴンボール』(鳥山明)を通ってると思います。
鳥山明先生の背景の描き方がすごく好きで、シンプルなんだけど、分かりやすいライン。さらに言うと『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』(原作・設定:川又千秋 脚本:小柳順治 画:藤原カムイ)という漫画は個人的にすごく影響を受けました。藤原カムイさんの絵は鳥山先生の絵っぽいんですけど、背景の描き方の密度がもっと高くて、しかもあまりトーンを使わず線だけで立体的に見える絵なんです。
『よつばと!』(あずまきよひこ)も好きな絵で、ああいう感じの背景を描く現場に入ったことがないから楽しそうだなって。描き方も分かるし描けるんですけど。柔らかくて、いい空気感を出すなあって。しかも『よつばと!』は何がすごいって生活感の塊なんです。あちこちにモノがあって、“子供いないと分かんないよね、この汚れ方”っていう散らかり方。配置が緻密過ぎて目の前にあるかのように見えるんですよね。
『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』(作画:長田悠幸 原作:町田一八)という音楽漫画も、先生の演出がすごすぎてエフェクトや背景が楽しそうなんです。ほとんど先生一人で描いてるみたいですけど、いい感じに広い画面を見せつつ、描き込むところはすごく描き込むメリハリが効いてて。たまに開いて参考にしています。大好きな作品です。