2018年2月公開の映画には良作が多いです。年末年始の映画は弾け切らなかったのに、正月第2弾は観たい作品が集中しすぎで、もっと散らしてくれというレベル。とりあえず、この冬の間に観ておきたい映画をピックアップしました。
フランシス・マクドーマンドの皺が刻まれた顔は「娘を殺された母」の覚悟を体現
2月1日公開の『スリー・ビルボード』(脚本・監督:マーティン・マクドナー)は、第75回ゴールデン・グローブ賞で作品賞、女優賞、 助演男優賞、脚本賞の4部門で受賞。物語はアメリカのミズーリ州にある田舎町で始まります。閑散とした道路脇に立つ3枚の広告看板。ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)はある日、自分の娘が殺された未解決事件について、地元警察に捜査を促すメッセージを掲示します。看板の言葉は町の人々にショックや不快感を与え、ミルドレッドに対するメッセージを下ろせという忠告や、嫌がらせにまで発展していきます。
フランシス・マクドーマンドの皺が刻まれた化粧っ気のない顔は、ミルドレッドの誰の非難にも屈しない鋼のような覚悟を、抜き差しならぬほど体現しています。佇まいを見ているだけで心がヒリヒリしてくるほど、ためらいが削がれた心の贅肉のなさ。またミルドレッドがもし男性だったら、町の人々の反応も違っていたんだろうな、という想像も湧くリアリティのある脚本と演出です。直情的で深い考えもなく差別をする、警官ディクソン役のサム・ロックウェルも好演。彼がこの物語でもっとも状況の変化に揉まれるキャラで、本作のもうひとりの主人公といえるキーパーソンです。見終わってからも提示された問題について考えずにいられない、余韻のある映画です。