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 この他にも、膵臓がん、肝臓がん、胃がん、骨肉腫など、転移や再発した治療が難しいケースが、「自家がんワクチンで治った」とセル社は主張している。添えられている一文には大袈裟な表現が多い。

「死者が生還した!」と言われるほどに、驚きをもって転帰が修正された著効例です

脳腫瘍のケースを紹介したセル社のHP(「がん治療の専門医も驚いた症例の数々」より)

「患者に誤解を与える内容が多く、虚偽又は誇大広告の可能性が高い」

 このHPを見たがん患者は、深刻な状態のがんでも、自家がんワクチンの治療で奇跡が起きる、と希望を抱いても不思議ではない。だが、厚生労働省の医療広告審査に関わってきた、中川素充弁護士(オアシス法律事務所)によると、セル社のHPは違法性が高いという。

「患者に誤解を与える内容が多く、『治った』『効いた』という表記は虚偽又は誇大広告の可能性が高いと思います。それに医療法で掲載が基本的に禁止されている症例画像が、随所に使われているのは問題です。法改正されて、厳しく医療広告が規制されている中、このHPは度が過ぎていますね。なぜ、放置されているのか不思議なくらいです」

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 2018年に改正された医療法は、HPなどインターネットの医療広告について規制対象に加えた。治療前後を比較した、CTなどの症例画像の使用が、原則禁止になっているのは、患者に過大な期待や誤解を与える可能性が高いからだ。治療の成功例だけを掲載していると、治療効果がないケースを意識することは難しい。

 セル社は、症例画像を掲載していることについて、次のように主張していた。

ご案内:このページは、掲載責任者であるセルメディシン株式会社が医療機関ではなくバイオ研究開発企業であることから、症例報告を掲載しても厚労省の「医療広告ガイドライン」には抵触しないことを、茨城県保健福祉部厚生総務課に確認済みです。

※2021年12月時点の掲載

セルメディシン社のHPより(*その後に削除された記述、赤線など一部加工)

 改正された医療法(第6条の5)では、広告規制の対象を医療機関だけでなく「何人も」とした。むろん、バイオ研究開発企業も例外ではないので、セル社の主張には疑問が残る。そこで、茨城県庁を訪ねて、担当の医療指導監(2021年12月当時)に取材した。