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用意周到な「終活」の流儀

――一方で、ご著書の中では「終活をしている」とも綴られています。それは、ご自身の中で受け入れているからこその「終活」なのでしょうか?

大崎 もう受け入れていますね。万が一のときに備えて、仲の良い人に家のスペアキーを渡しているし、お隣さんと娘にはLINEでつながってもらっているんです。それだけでもちょっと安心。娘が帰国すると、その家に挨拶だけは行ってもらっています。あと、自分の意思をきちんと書き残しておくこともしていますね。たとえば、健康保険証の裏に「延命治療は望みません」と書いて、シールでふたをしています。目隠し専用のシールがあるんですよ。

すっきりと片付いているキッチン ©文藝春秋

――考えようによっては、1人だからこそ「強い」のかもしれない。

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大崎 強いと思いますよ。強くなるしかない。私が死んだ後のことも想定して、自分の戸籍に関する書類も一式取得しました。

 終活に詳しい方から「生まれてから現在までの戸籍謄本を用意しておいたほうがいい」と言われたんです。大した金額ではないですが、貯金などの相続に必要だから、と。ずっと同じ場所で暮らしている方はすぐに手配できると思うけど、私は離婚歴があるし、引っ越しのたびに本籍地を移していたので、骨が折れましたね。

 遠方の役所から郵送してもらう場合は、定額小為替を買って、返信用封筒と一緒に送るんですよ。そういった手続きがいちいち本当に大変なんだけど、自分でやれることはやってしまおうって。ロンドンにいる娘の手を煩わせるのも申し訳ないじゃない。

ふすまには世界地図を貼っている ©文藝春秋

「もちろん永代供養の費用も支払済み」

――お墓については?

大崎 私は、もう納骨の場所もずいぶん前に買っているんです。65歳のときに決めちゃった。お骨を置く場所が決まっていないと娘が大変でしょ。私のお骨を持ってイギリスには行けないから。大きい必要はなくて、小さくてもいいの。もちろん永代供養の費用も支払済みです。その頃から、気持ちを切り替えられたというかスッキリして、楽に生きられるようになったと思います。

――大崎さんは、60歳のときにクリスチャンになられているんですよね?

大崎 30年ほど前に、娘が洗礼を受けたんですよ。洗礼式には私も同席したのですが、その和やかな雰囲気がふしぎと心に染みて。私もキリスト教について勉強したくなり、教会の講座へ通い、60歳のときにクリスチャンになりました。