文春オンライン

2022/11/20

genre : ライフ, 社会

タクシー運転手による偏見に満ちた話の数々

 一度、深夜まで仕事をして終電を逃し、クタクタになりながら飛び乗ったタクシーで、運転手さんに

「今は女の人も仕事をして大変だよねぇ」

 と話をふられて、思ってもいないのについ

「そうですねぇ」

 と答えたことがありました。

 途端に

「女の人が遅くまで仕事をするなんて、いやな世の中になった」「保育園がないというけど、子どもはお母さんといたいもんだ」「うちの息子の嫁が仕事を始めて孫を保育園に入れたら毎日風邪をもらってきてかわいそうだ」etc.

 と偏見に満ちた話の数々が…。

 当時、まだ息子が小さくて、熱を出すたびにヒリヒリしながら仕事の調節をして帳尻を合わせ、一方で病気の子どもを病児保育にあずけて仕事をすることにかなり胸を痛めていた私にとって、こういう言葉は暴力と同義。

「あなたに何がわかるのよ!?」

 涙ながらに抗議しそうになったけれど、ハンドルを握っているのは運転手さんですから、ケンカをするわけにもいきません。その人の運命も左右しかねない力を持っている人からハラスメントを受ける悔しさってこんな感じなのかも…と思った瞬間でした。

ハラスメントの証拠はきっちり記録

 20年前のインターネットもまだ普及しきっていないころ。SNSももちろんなかった時代です。タクシーの中以外でも、さまざまな場面で、さまざまな人から差別的な発言を受けました。後輩たちの話を聞くと、民間人が宇宙に行ける時代になっても、それはあまり変わっていないようです。そして近ごろ、私が受けるハラスメントは主に年齢に関すること。「あれ? もうすぐ50歳だよね(ニヤニヤ)」「45歳から大学院になんか行ってどうするの?」。大きなお世話です。

 そんなときはお札(ふだ)の出番。

「そうなんです。◯◯さんが女性を差別したり、年齢で人を判断したりする人じゃなくてよかった!」

「あなたは男尊女卑なんてしない紳士」というお札をオデコにピタッと貼ったら、相手はそう振る舞うしかありません。

 怒りに震えて言えないって? 実は私も最初は棒読みだったけど、もう何回も言っているのですっかり大女優の域に達してきました。

 もちろんこういう技が通用しない相手もいます。そういう人の言動はきっちり記録! 職場での無断録画・録音は情報漏洩などの観点から原則禁止されている会社が多いと思いますが、ハラスメントの証拠を集めるためならいたしかたありません。もしそれができなければ、いつ、誰に、どういう状況で、どんなことを言われたのか、ということをメモに残しておきましょう。次にするのは仲間を見つけることです。ひとりの声は小さくても、「私も同じことをされました」という人がいれば、会社も放ってはおけません。

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