日本中で性病「梅毒」が猛威を振るっている。性器や肌にできる特徴的な模様が有名だが、症状が収まる潜伏期をはさんで徐々に悪化し、最終的には死に至る可能性もある恐ろしい病気だ。
治療法自体は1943年に確立したが、近年になって急増。2012年頃までは年間で数百人程度の感染者にとどまっていたが、今年ついに年間1万人を初めて突破し、現在の集計方法となった1999年以降、史上最多を更新した。
主な感染経路は性行為で、皮膚や粘膜の小さな傷に病原体が侵入することで感染する。他の性病に比べて感染力が非常に強く、キスやオーラルセックス、アナルセックスなどでも感染し、1回の性行為でうつる確率は30%近いと言われている。
国立感染症研究所の調査によると、女性は20~30代が全体の75%を占める一方、男性は20~50代まで幅広い年齢層で感染が拡大している。世代の分布から、性風俗や“パパ活”との関連を指摘する声もある。
日本でじわりと広がる梅毒、実際に感染するとどんな苦しみを味わうのか。過去に2度感染した経験を持つ、東京都内在住の20代男性Aさんに話を聞いた。
「セックスの最中に引っかかるような違和感が」
――梅毒の症状は気づきにくいとも言われますが、Aさんが体の異変に気付いたきっかけは何だったのでしょうか?
Aさん 最初に梅毒にかかったのは、コロナが流行り始めた2019年の夏でした。セックスの最中に陰部に何か引っかかるような違和感があり、行為が終わって風呂で確認すると陰部にニキビのようなものができていました。ただ痛みは全くなかったので「こんなところにもニキビができるんだ」と軽く見過ごしていました。でも次の日になると陰部がどんどんかゆくなり不安になりました。
――症状はかゆみが主ですか?
Aさん いや、かなりひどかったですよ。陰部がカサカサになっていき、アトピーのようになりました。“ニキビ”だと思って放置していた部分が膨み、陰茎もパンパンに腫れあがってマンボウのようになり、陰嚢が小さく見えるほどでした。それでも痛みはなく、逆に怖かったです。その後徐々に顔や手もかゆくなり、我慢できずにかくと肌がボロボロになる。そのあたりでさすがに「これはクラミジアとかじゃないな」と気づきました。