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大金に目がくらみ「ダークサイドに堕ちる医師」も…

――コロナ禍ではワクチンやマスクに対して不安を煽る医師がSNSで存在感を放っていますが、これはスピリチュアル嗜好や情報の古さなどとはまた別の問題でしょうか。
 
今西 そのあたりは一部、金銭的な問題がからんでいるでしょう。医療者の中には開業時に億単位の借金を背負っている人も少なくない。窮状にいる医師たちに、大企業なんかが怪しげな療法を売り込んでくるケースは珍しくありません。

 しかも、ありえないくらいの高額を提示してくるんです。そこに飛びついてしまう医療者はごく一部ですが、確実に存在します。実際に、僕が信頼していた後輩の医師が、開業したとたんに怪しい療法に手を出しそうになりました。リテラシーの高かったあの人もこうなるんだと、ある意味興味深かったですが。結果的にまわりの医師達から反対の声が相次ぎ、実際には採用しなかったようです。

 そうした医師たちがビジネスに直結していると、ターゲットがよく研究されていることもあり、勢いよく広まります。胎内記憶もその例かと。子育て世代は常に更新されていきますから、今育児中のお母さんたちは、デマが原因で起こった昔の事件なんかを知らないわけです。「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」(※1)とか「キッズスタディオン事件」(※2)とか。

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 だから、どんなデマも既に否定されたからと安心せず、情報は発信し続けなければなりません。過去には医療界がデマ、すなわち呪いを後押ししたものもありますが、1個ずつ絡まった糸をほどくように、間違った情報を正していくのもやはり科学です。この記事を見てくれた方にはまず、社会はこれだけ呪われているということを、知っていただきたいですね。

※1 「ホメオパシー」という代替医療にもとづく治療によって新生児が死亡したとされる2009年の事故。助産師の指導のもと、ビタミンKを投与せずにビタミンKと同様の効果を持つと主張される砂糖玉を新生児に与え、結果生後2ヶ月で硬膜下血腫が原因で死亡した。

※2 新潟・上越市のNPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」の姫川尚美理事長が、自ら考案した「ズンズン運動」と称する施術で、生後4ヶ月の男児を死亡させたとして2015年に逮捕された。「免疫力を高める」「寝付きがよくなる」などが謳われていた。