優しい味わいながらも満足感の得られるうどん
さて、気になる味はどんなものだろうか。一番人気だという「スタミナうどん」(400円)をいただく。第一印象は「熱い!」。うどんの器を手にとると、まずその容赦ない熱さに驚かされる。
具は、えび天、ゆでたまご、牛肉、カマボコ2片、ねぎ、わかめ、ゆず。ここに透き通っただし汁がかかっている。値段と自販機という形態からは想像できない、ボリューム感のある一杯だ。
まずはスープから一口。フワーッと、ゆずの香りが広がる。
「近くにある益田市美都町がゆずの名産地で、そこのものを使っています。秋だとまだ青いですが、冬になると黄色くなりますね。その時期のゆずを冷凍しておいて、1年中うどんに入れられるようにしています」(後藤さん)
このゆずが実に良い仕事をしており、チープさは一切感じられない。
加えて特筆したいのは牛肉だ。甘辛い味付けで煮こまれた牛肉は、毎日仕込まれているという。上から熱いだしを注がれることによって、牛肉の脂と煮汁が溶けだし、スープのコクになっているのだ。
麺はいわゆるソフト麺なのでこしが強いタイプではないが、全体の調和がよく取れていて、優しい味わいながらも満足感の得られるうどんに仕上がっている。
メニューは日によって変わる。取材当日は、スタミナうどん以外に、ラーメン、肉うどん、鶏天うどん、肉そばがいずれも350円で提供されていた。
場所によって少しずつ違った中身のうどんを楽しめる
実は、後藤商店の2軒隣にもレトロ自販機が置かれた「ドライブイン オアシス」がある(なお、オアシスでもうどんが提供されているが、チャーシュー、ゆでたまご、キクラゲ、もやしなど具だくさんなラーメンをオススメしたい)。車でさらに5分ほど進むと、やはりレトロ自販機が置かれている後藤商店の支店もある。
いまでは貴重なレトロ自販機が固まっていることから、一部のファンの間では「聖地」とも呼ばれているそうだ。
島根県には他にもレトロ自販機が点在しており、場所によって少しずつ違った中身のうどんを提供しているという。自販機なので、売り切れていなければ24時間いつでも楽しむことができる。インスタント(即席)ではあるが、毎朝手作りされているレトロ自販機のうどん、機会があれば是非この驚きを体験していただきたい。
写真=山元茂樹/文藝春秋
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