母親の枕元に「今は自さつしたいです」と書いた手紙を置くほど精神的に追い詰められた子どもが、加害者と市を訴えた――。
大阪府堺市の市立小学校に通っていたミチコさん(仮名)が3年生と4年生のとき、同級生の女児2人から無視や仲間はずれなどのいじめを受けた。これにより精神的苦痛を受けたとして、女児2人サトさん(仮名)、マイさん(仮名)の保護者に、またいじめ調査・防止義務違反として堺市に対して連帯して165万円の損害賠償を求めて、大阪地裁堺支部に提訴した。
ミチコさんは、サトさんとマイさんの保護者や学校、市教委に「謝罪をしてほしい」と話す。
いじめの早期対応ができていれば、深刻化しなかったはず
ミチコさんの母親も「学校や市教委は最後まで、娘のいじめに対して真摯な対応がなされなかった」と筆者の取材に語っている。
いじめによる不登校だったことから、ミチコさんの母親は市教委に対して、重大事態としての調査委員会の設置を要望していた。結果、調査委が設置され、2020年10月に報告書が公表された。この調査の範囲は、不登校になった4年時の事案のみ。その範囲で、サトさんとマイさんのいじめを認定した。「(いじめを受けたミチコの)精神的苦痛も相当なもの」とした。また、学校としても、まったく指導をしていないわけではないが、寄り添った対応が必要としていた。
報告書では、以下のようにも指摘されていた。
〈ミチコにすれば、学校の先生はいじめられている自分ではなくいじめてくる相手、すなわち加害児童の味方ばかりすると感じており、ミチコは底知れない恐怖や不安で緊張し、耐えがたい不信感や孤立感にさいなまれ、学校がもはや安全安心な場所ではなくなり、むしろ登校できない状況に追い込まれたものと推察される〉
裁判になった理由について、母親はこう説明した。
「いじめそのものが、娘にとって『大丈夫』というような解決に至りませんでした。報告書が出た後に、学校や市教委担当者からは、不適切な対応については謝罪がありました。ただ、教育長や市長からはありません。加害者の保護者からも誠意のある謝罪がありませんでした。また、学校での人間関係が修復されませんでした。最終的に娘は不登校になり、調査委によって重大事態と認定されましたが、責任の所在を明らかにしてほしいと思っています。いじめの早期対応ができていれば、深刻化しなかったと思います。
また、調査委では中立公平の人が委員になると思っていました。しかし、報告書ができてわかったのですが、そうではありませんでした。設置規約も文書化したものはありません。それなのに、再調査をお願いしたときに、(調査委を担当する)市長部局では『調査は問題ない』としました。いじめが悪化した理由には触れられていません。母親としては、真相解明が不十分と考えています。最終的には、娘が、弁護士との話し合いで決めました。このままでは、区切りがつかない。
娘をここまで傷つけた加害者に対しては、ちゃんと反省して、自ら謝罪をしてほしかったんです。学校や市教委、市長部局からは、最後まで娘のいじめに対して真摯な対応がされなかったと思っています。娘からの『自さつしたい』というSOSをキャッチしながら、ずっと危機感もなく、誠心誠意な対応もされず。子どもを自殺から守るには、もう訴訟しかありませんでした」
主な裁判上の訴えは何だったのか。