文部科学省は、2021年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を発表した。それによると、小中学校、高校、特別支援学校の「いじめ」の認知件数は61万5351件で、前年度を上回った。

「児童生徒1000人あたりの認知件数」は全国平均で47.7件。都道府県(政令指定都市を除く)の認知件数の差は最大で9.9倍で、地域によって格差が大きいことが明らかになった。各自治体の教育委員会に話を聞いてみると、各自治体での対応が統一されておらず、単純化できない実態も見えてきた。

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新潟市は全国平均の5倍の認知数

 いじめの認知件数を都道府県別に並べると、最多の東京都(6万569件)をはじめ、人口が多い地域が目立つ。逆に最小は福井県(1420件)、富山県(1539件)、愛媛県(1782件)となっている。

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 そこで割合を示す「児童生徒1000人あたりの認知件数」を比べてみると、最多は新潟市で232.2だった。単純計算で約4人に1人はいじめに関わっていることになる。

「全国平均の5倍の認知数になっています。認知件数が上がる工夫としては、『いじめアンケート』は年3回以上しています。小学校は低学年、中学年、高学年用に内容を変えて、低学年用には、わかりやすい表現にして、ルビを使っています。また、該当箇所に『◯』をつける形なので、周囲の子に気が付かれないように配慮しています。昨年までは教職員用に『初期対応ハンドブック』を配布していましたが、現在はネットで配信をしており、一般市民も閲覧できます」(新潟市)

 実は「認知率が低い」からといって、必ずしも「いじめが少ない」とは言えない。なぜなら、いじめの発生そのものを確認できないためだ。一方、「認知率が高い」ということは、小さいいじめであっても、把握していることを意味する。さまざまな方法を使って、いじめを認知する努力をしているのだろう。

 そもそも、文科省は、いじめの定義を広く扱う方針を示している。従前は「けんかを除く」との記述があった。しかし、「いじめの防止のための基本方針」の改訂(17年3月14日)では、けんかやふざけ合いでも児童生徒の感じる被害性に着目して、いじめに該当するか否かを判断する、としている。この方針が浸透していれば、認知率が他の自治体より高くなることが考えられる。

 次いで仙台市(152.3)。2014年に市内の中学生が自殺した問題を受けて、市は原則として全中学校に「いじめ対策専任教諭」を配置した。この教諭は授業を行うものの、クラスの担任を持たず、いじめ対策に専念する。また、小学校には非常勤の「いじめ対策支援員」も置いている。

 

保護者にアンケートを取っているのは山形県のみ

「いじめの認知件数が多いのは今年に限ったことではありません。いじめは軽微なものを含めて積極的に認知していくことにしています。いじめの認知のきっかけで多いのは、アンケートです。年1回、市として一斉に行なっています。その際、家庭で回答することになるのですが、親子で相談をしながら家庭で回答することになります。こうしたことで、子どもたちが訴えやすくなっているのではないでしょうか」(仙台市)