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 県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)

本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て判断

 文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。

 

 都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。

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「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。

認知率が高いところでは独自の取り組みが

 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県)

 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。

 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。