森保一監督は泣き虫だ。いくらなんでも泣き虫すぎる。ドイツ戦前、君が代が流れる中、森保監督は歌いながら目に涙を浮かべていた。就任から4年強、様々な思いが去来したのだろう。

森保一監督

どたばたのスタートだった森保ジャパン

 思えば、初陣から前途多難だった。2018年9月7日、森保ジャパンとしての初戦は札幌でチリを迎えて行われるはずだった。だが北海道胆振東部地震の影響を受けキャンセルされた。私自身も試合に向かうフライトが飛ばず、空港から引き返したことを覚えている。

 続く11日、本来就任第2戦となるはずだったコスタリカ戦、開催地大阪は1週間前の台風の影響で大変なことになっていた。関西国際空港の滑走路は高潮で閉鎖、タンカーが衝突し連絡橋が損傷、空港は一時孤立した。試合こそ通常通り行われたが、関西空港から欧州に帰る多くの選手たちが、出発を中部国際空港などに振り替えねばならなかった。

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 とにかくどたばたのスタートだった。最終予選が始まる前には、コロナ禍がやってきた。何もジャパンのみがコロナの影響を受けたわけではないが、過去のW杯前に比べ思うような準備、チームビルディングができなかったのは確かだ。

 そんなあれこれを思い出したのかわからないが、監督としてのW杯初陣ドイツ戦前の国歌斉唱を終え、森保監督は目元をハンカチで拭わねばならないほどの涙を流していた。

日本対ドイツ戦、国歌斉唱で涙ぐむ森保監督 ©時事通信者

 昨年10月12日に行われた最終予選第4戦オーストラリア戦前にも涙を見せている。同じく国歌斉唱中に感極まってのことだった。この時は森保ジャパン最大のピンチに陥っていた。最終予選初戦でオマーンに負け、第3戦までで1勝2敗。黒星スタートの最終予選は突破したことがないという過去のデータを覆すべく、何としても落とせなかったのがこの第4戦だった。その試合前に泣いたのだった。