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 また、同年8月には共同通信が、合憲違憲が争われた戦後の重要な民事裁判の記録が多数廃棄されていることを伝えた。同社の調査では、『憲法判例百選第6版』(有斐閣)に掲載された事例のうち、検察庁が保存する刑事事件を除いた137件のうち、86%にあたる118件が廃棄されていた。その中には、一審の札幌地裁で自衛隊に違憲判決が出た「長沼ナイキ訴訟」や沖縄の米軍用地の強制使用を巡る代理署名訴訟、裁判官の政治的活動の制限と表現の自由が争点となった「寺西判事補分限裁判」、オウム真理教に対する宗教法人解散命令などが含まれていた。

 このことは国会でも問題となり、最高裁事務局長が「(保存規程の)運用に問題があった」と認め、運用方法を見直す考えを示した。この時も、最高裁は全国の裁判所に対し、あらゆる民事裁判記録の破棄を一時停止するよう指示した。

最高裁大法廷

最高裁は各裁判所が運用要領を策定するように通知

 その後、多くの事件記録を抱える東京地裁が新たな運用要領を策定。

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▽最高裁判例集に掲載
▽主要日刊紙2紙以上に記事が掲載
▽担当裁判官が所属する部からの申し出

――といういずれかの場合に、地裁所長が保存認定するとの基準を設けた。さらに、弁護士会や学術研究者、一般からの要望があれば、裁判官らで構成する選定委員会で検討したうえで地裁所長が判断するなど、外部意見を取り入れる仕組みも作った。最高裁は、これを参考に、各裁判所が運用要領を策定するように通知した。

 これにより、民事事件の運用が改められた際、少年事件の記録についても、同様の対応がなされたのかどうかは不明だ。