世の中には必要だが、その実態はよくわからない仕事というのは数多くある。「害虫・害獣駆除」もそのカテゴリーに入るかもしれない。
どんなに衛生的な環境を整えても、害虫や害獣を根絶することは難しい。おしゃれで高級なレストランの天井にはネズミが走り回り、近代的なオフィスビルにもゴキブリやハエ、ネズミが発生している……。そんななか人知れず害虫や害獣を駆除しているプロ業者に、最近の事情と駆除の現実を聞いた。
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研修中の虫の写真でくじける人も
近藤裕二さん(仮名・33歳)は、害虫・害獣駆除会社で働き始めて3年目。もともと虫好きだったこともあり、仕事に対する嫌悪感はなかったという。
「クラスにひとりは昆虫好きっているじゃないですか。自分はそのタイプだったので、駆除の仕事もできるかなと思って入社しました。新人は最初に研修があって、まずは虫の習性や生態、それに薬剤について学びます。でも、その時点で、いろんな虫の写真が出てくるので、そこで挫けちゃう人も中にはいました。ある程度の覚悟はしていても『これとリアルに接するのか』と考えたらムリだったんじゃないですかね。
研修が終わると先輩の現場に同行して、この虫の生態だと、こう逃げるから、ここに罠を仕掛けようとか、実地で色々覚えていくという感じでしたね」(以下、近藤さん)
駆除を請け負うのは、7割が飲食店。害虫が大量発生したので緊急出動することもあるが、基本的には定期契約を結び、予防と駆除を一定間隔でおこなっていくことが多いという。エリアは新宿・歌舞伎町や、渋谷などの大型繁華街が中心だ。
「最近は再開発が盛んで、古いビルを取り壊したりすると、そこに潜んでいた虫がまわりに散っちゃうんですよ。いままで出てなかったのに急な依頼があったお店の周囲を見ると工事現場があったりすることが多いです。あと時期もありますね。寒くなってくると、虫もネズミも温かい屋内に入り込みやすいんです。駆除のシーズンは春・夏と思いがちですけど、都会なら冬でも依頼が減らなかったりしますね」
シャワーと言ってもいいくらいボトボトと……
駆除依頼で多いのは、ゴキブリ、ハエ、ネズミ。これは季節や場所に関係なく発生しているという。