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「死んだ臭いもクレームになりますけど、生きたまま捕まってて鳴き出すのも困るんですよ。それがお客さんがいる時間帯だと非常にまずいので、咄嗟に粘着板を畳んで上から踏みつけたこともあります。残酷ですけど騒ぎになってしまうと大変なので」

 苦労をして駆除、捕獲した虫やネズミたち。それはその後どこで、どのように処理されるのだろうか。

「まず車に積んで会社まで持って帰ります。各営業所に大型の冷凍庫があって、そこにまとめて入れておくんです。それを週に1回くらい別の業者さんが来て回収していく。その業者さんがどこに持っていって、どんなふうに処理してるかまでは現場の僕たちにはわからないですね。たぶん、どこかで焼却処分してるんだとは思いますけど」

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 ゴキブリ、ハエ、ネズミが3大ターゲットとなるが、営業所には他にも様々な害虫・害獣の駆除依頼が届くという。

「ムカデやクモが大量に出たとか……。あとこれは先輩に聞いた話ですけど、トカゲが粘着板に掛かってたことがあったそうです。それも普通にいるやつじゃなくて、飼育用の珍しい種類。どこかから逃げ出したんですかね……。

 あと、鳥は捕まえたらダメなんですよ。鳥獣保護法で守られているので、スズメとかカラスも罠にかからないようにしてます。あとハクビシンもダメです。たまに被害があって依頼もあるんですけど、資格が違うのでウチはやってないんです、とお客さんに説明します。

 他にはハチの巣の除去はやってますね。これは割と楽な仕事で、防護服を着て、ハチが触れただけでボトボト落ちるくらいの強い薬剤があるので、それを噴霧して完全に弱ったところで巣を取るだけ。慣れてしまえば簡単です。蜂の巣ひとつにつき駆除費用はわが社では1万5000円なんですけど、小さくても2つあればそれで3万円。短時間で処理できますし、仕事としてはおいしいですね」

©iStock.com

「まだ音がする」害虫駆除業者の“あるある”とは

 害虫や害獣との格闘を続ける毎日だが、依頼してくる顧客たちにも向き合わなければならない。

「お客さんからのクレームというか、最初の依頼で一番困るのは『足音がする』って言われるときですね。ネズミが天井を走れば音がすることもあると思うんですけど、実物を目撃したわけじゃないんですよ。だったら、それが何の音なのかわからないじゃないですか。

 それでまず調査のために定点カメラを設置したりするんですけど、ネズミは現れない。とりあえず穴を探して塞いで、たぶんもう出ないです、と納得していただいたのに、数日後に『まだ音がするんだよね……』。これは同業者ならわかってもらえる“あるある”ですね」