「『合法痴漢?』みたいな状態でした!」
「私たち、普段はYouTuberをやっていて、本当はサッカーとか全然興味ないんです。でも、来てみたら、めっちゃ楽しかったですね!」
「今日だけで何人とハグしたかわからないですよ! 『合法痴漢?』みたいな状態でした! 楽しかったー」
彼女たちはエロティシズムを売りにしたYouTuberだから、あっけらかんと状況を語っていたが、スクランブル交差点の密集具合、そして、誰もが気軽にハグをし合ったり、ハイタッチをしあったりする空間はどこか異様さも覚える。
「いやー! おめでとうございます! やりましたね!
今日はついさっき来たんですよ。家がここから3分くらいなんで。同点になって、逆転して、ロスタイムになって。ずっとソワソワするじゃないですか! 勝ちの喜びを分かち合いたくなって、勝った瞬間にここまで来ました。
美容師をやっていて、仕事は9時からです! 有給も取っていないんですよ。もう、このTシャツのまま行っちゃいますね!」
こんな狂騒は試合が終了して1時間ほど経っても変わらない。スクランブル交差点の信号が青になるたびに、「ニッポン! ニッポン!」と声を張り上げる集団が現れ、警察官がそれを制すという光景が繰り返されていた。
しかし、通勤で渋谷を利用する人々が多く訪れる時間帯になると、徐々に様相が変わって来る。盛り上がりの拠点が、ハチ公前・スクランブル交差点から、(駅から離れていく方向にある)バスケットボールストリートへと移っていったのだ。
「これからは着替えてバイトですね。僕たち、実は芸人をやってまして、それだけにもちろん名前と顔を売りたいって気持ちがなくはないですけど、それ以上に、みんなと喜びを分かち合いたくて渋谷まで来ました」
ここまで紹介してきたとおり、渋谷に集った人々は、皆が思い思いに感情を爆発させ、いまこの瞬間を楽しんでいるようにうかがえた。