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「習近平は裸の皇帝」元部下の女性学者が日本メディアに初めて答えた

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 中央党校からは、帰国を要求する電話がひっきりなしに掛かるようになりました。

 党校の担当者はやがて「どうしても戻らないのか。あなたは自分の(中国国内にいる)子どもや家族が心配ではないのか?」と言いはじめました。それでも応じずにいると、彼らは一方的に、私の党籍の解除と年金の打ち切りを通告してきました。〉

習近平3期目は世界に大きな災厄をもたらす

 それにしても、なぜ彼女はここまで激しく習近平を批判しようと覚悟を決めたのか?

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〈習近平政権の第3期目を阻止するべきだと考えたからです。2022年10月の第20回党大会を控えたタイミングで、あの文書を世界に向けて示すことで、楔を打ち込めないかと思ったのです。〉

「フォーリン・アフェアーズ」の論文のなかでは、習近平が会議で異常に長時間の演説を好むことや、あらゆることに干渉する偏執的なこだわり、さらには文化大革命で充分な学問を修められなかったコンプレックスなどを指摘し、キャリアの初期に親の口利きでポストを得ようとして失敗したことも伝えている。これについても蔡霞氏はこう語る。

〈根拠なき誹謗中傷を書いたわけではないですし、「攻撃」したつもりもありません。私は学者ですので、自分が知り得た確かな事実を記したに過ぎないのです。

 仮に習近平が一般人であれば、私が指摘した問題は、いずれも個人的な欠点でしかないでしょう。しかし、彼は巨大な国家権力の掌握者です。彼の欠点は、そのまま全中国国民の、さらには全世界の人々の未来に負の影響を与えます。新型コロナのパンデミックの初期に世界が手をこまねいたような事態を、再び繰り返してはなりません。〉

蔡霞氏 ©安田峰俊

「勉強不足でIQが低い」

 蔡霞氏が中央党校のなかで見聞した、習近平にまつわるエピソードも興味深い。

〈体制内の学者や紅二代(高級幹部の子弟)の一部には、もともと習近平への強い懐疑が存在していました。例えば2012年秋、習近平が党総書記に選出される第18回党大会を控えた1ヶ月前に、ある雑誌記者が、中央党校の著名な教授へのインタビューに来たことがあります。 私も取材に同席しました。