この教授は管理職なので、上司である習近平とは直接面識があり、また昔から習を知っていました。そこで、インタビュー後に記者が何気なく「習近平氏が次の総書記になりますねえ」と水を向けたんです。すると教授は、
「他(ター)呀(ヤ)? 知識(ヂーシ)不夠(ブゴウ)、智商(ヂーシャン)不夠(ブゴウ)(ヤツか? 勉強不足でIQが低い)」
と、敬意を一切感じさせないぞんざいな口調で言い放ったのです。
当時はまだ、私自身を含めて習近平に対する期待が強い時代でした。彼の父親の習仲勲は非常に人望のある改革派幹部でしたから、習も改革派の気質はあるだろうと思われていたのです。
しかし、やがてこの教授の指摘が、完全に事実であったことを、痛感することになりました。習近平の人格を説明するうえでは、「勉強不足でIQが低い」という言葉こそ、最も的確な表現だったのです。〉
中国は台湾を模範とすべき
習近平政権は台湾に強い圧力をかけ、武力併合も辞さない姿勢を見せているが、蔡霞氏は「台湾こそ、中国人が模範とすべき政治体制」と指摘する。
〈天下を統一した現代中国の帝王として、歴史に名を残したいという思いは、習近平もあるでしょう。中国共産党にとって台湾統一は、朝鮮戦争という外部的な要因により果たせなかった問題です。台湾問題の解決は、党にとっての一貫した悲願です。
加えて指摘したいのは、台湾が民主主義体制の地域であることです。仮に台湾がいまなお蒋介石以来の独裁体制下にあるなら、同じ独裁政権同士で水面下の対話が可能になります。しかし、現在の台湾はむしろ、中国人が模範とするべき地域です。党にとって、そうした台湾の姿こそ最も大きな脅威です。〉
では、日本はどのように習近平政権に向き合うべきなのか?――中国共産党の内幕を知りつくす蔡霞氏のインタビュー「私が習近平から逃げ出した理由」は、12月9日発売の「文藝春秋」1月特別号、および12月8日公開の「文藝春秋 電子版」で全10ページにわたって掲載されている。