3期目を迎えようとしている習近平国家主席が、虎視眈々と狙う「台湾統一」。そのとき台湾は、日本に何を期待するのか――。

 中国共産党大会が10月16日からはじまる。習体制が異例の3期目に突入しようとしている今、目が離せないのが台湾危機をめぐる情勢だ。8月上旬には、米国のペロシ下院議長の訪台に反発した中国が、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施し、情勢が緊迫したばかり。いま現地・台湾はどのような対応を迫られているのか。

 台湾の安全保障分野の第一人者で国家政策研究基金会・副研究員の掲仲氏が、月刊「文藝春秋」のインタビューに答えた。

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3期目を迎えようとしている中国の習近平国家主席

中国の目標は「速戦即決作戦で全土占領」

 まず掲氏が指摘したのは、中国人民解放軍が台湾に侵攻する体制を整える時期についてだ。

「米国政府や米軍の一部には、習近平体制が3期目の終わりを迎える2027年、中国国内で権力闘争が起きて、台湾海峡で緊張が高まると懸念する声もあります。ただ、私は、台湾海峡危機が起きる可能性が最も高まるのは、2027年ではなく、2030年から2035年にかけての時期だと考えます。

 なぜなら、中国が台湾に侵攻するとしたら、台湾問題の徹底解決を図るため、台湾全土を軍事的に占領することを目標とし、作戦においては『速戦即決』を求めるからです。2030年から2035年の期間こそ、中国が速戦即決で台湾侵攻を遂行する能力が整えられる時期です」

掲仲氏

 なぜ限定的な武力行使ではなく全面的な武力侵攻、それも速戦即決の戦術が必要なのか。掲氏が続ける。

「人民解放軍内の大多数の意見は、限定的な武力行使では台湾の反中国勢力を一掃できないので、全土を占領して台湾問題を一気に解決しなくてはいけない、というものです。中国が台湾への武力侵攻を決意した場合、海外の勢力の介入を招くことは中国自身も当然予測しています。南シナ海の諸国だけでなく、日本やインドも、中国との領土問題が解決していませんから無視できません。さらに、台湾への武力侵攻により、中国内の新疆ウイグル自治区やチベット自治区などで騒乱が引き起こされる可能性もある。つまり、中国からすれば、一気に徹底的に台湾を叩き、占領しない限り、反中国勢力の復活を許してしまう。抵抗の連鎖反応が起こらないように『速戦即決』が重要だと考えられているのです」