今年1月に着任したラーム・エマニュエル駐日アメリカ大使(62)は、アメリカの政界では剛腕として名を馳せ、「ランボー」の異名を持つ。大学在学中から政治活動に没頭。民主党陣営での選挙活動と資金集めで驚異的な実績をあげ、若くして頭角をあらわした。
1993年、ビル・クリントン政権で大統領上級顧問に就任し、ホワイトハウス入りを果たす。当時の上院司法委員長ジョー・バイデン(現大統領)とはそこで知り合った。そして2021年、バイデン政権の発足に伴い、駐日大使に任命された。
そんなエマニュエル大使は今、覇権主義的な傾向を強める中国に厳しい目を注いでいる。
中国の何が問題なのか、そして日米同盟は中国とどう対峙すべきなのか?――米民主党きってのタフネゴシエイターが「文藝春秋」のインタビューに答えた。
中国は最大の国際ルール侵害者
まずは、覇権主義的な傾向を強める中国について、率直な意見を聞いた。するとエマニュエル大使はニヤリと笑みを浮かべて「その質問に答え終わるのには来週火曜日までかかるから、覚悟して下さい」と前置きしつつ、こう答えた。
エマニュエル大使:中国については多くの人の理解が追いついていない部分が多いと思うので、アメリカとしては率直に話をすべきだと思います。
過去20年間、国際ルールに基づくシステムにおいて、最も恩恵を享受してきたのは中国です。それと同時に、国際ルールに対して最も多くの侵害を行ってきたのも中国にほかなりません。
中国は正しい決断、投資をしたおかげで、何百万人という中国の人々が貧困から脱することができました。
ただその過程の中で、ルールを侵害し、他国の知的財産などを盗み、他国をいじめ、抑圧するような行為を繰り返しています。ですから中国の国民が恩恵を享受できた一方で、別の面ではこのシステムを壊す行為を繰り返してきたのです。