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「なぜ三笘をもっと活かさないのか」「4年間で攻撃の積み上げが何もない」城彰二がカタールW杯で感じた“森保采配への疑問”

城彰二が見るカタールW杯とサッカー日本代表 #5

2022/12/08
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 森保ジャパンの攻撃は、いつも両サイドの三笘と伊東(純也)にお願いするみたいな感じでした。これは裏を返せば、この4年間で森保一監督が攻撃におけるコンセプトの落とし込みをしなかったということ。親善試合とかを攻撃の構築をする場ではなく、メンバー選考の場にしていたということなんです。

森保ジャパンの攻撃をけん引した伊東純也 ©JMPA

 やっぱりある程度戦うメンバーを決めて強化に時間を割かないと連動性は生まれないし、W杯の本番前にちょっと話をしただけでコンビネーションがうまくいくわけがない。森保監督が選手をリスペクトしているのはすごく分かるけど、形を作るためには監督が明確に指導しないとダメなんです。

 自主性を重んじて、自由にやらせていては時間がかかる。まずは監督がひとつの形を作って、それをベースにいろんなやり方にトライしたらいいのですが、そのベースがないのですべて選手任せになってしまう。攻撃については何も積み上げがないままW杯が終わってしまった感じです。

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――多くの人は、ドイツ、スペインに勝ったんだからという見方をしていると思います。

 そう考えるのは危険ですよ。僕は、コスタリカ戦とクロアチア戦の2試合で勝てないのが今の日本の実力だと思っています。もちろん、同じくベスト16のPK戦で負けた南アフリカW杯の時よりも、選手個々のレベルは格段に上がったと思う。

 でも、チームとして戦う場合、そのレベルが活かされていない。僕は、鎌田(大地)のようにもっとお互いに要求すればいいと思うんです。コミュニケーションを取っていると言っていたけど、必要なことを要求し、意見をぶつけるとか、そういう“本当のコミュニケーション”が取れていたのかなと疑問に思いますね。

選手の自主性を重んじた森保一監督 ©JMPA

日本サッカーがこれから進むべき方向性は?

――今後、日本サッカーは、どういう方向に進んでいくべきでしょうか。

 目指すべきサッカーは、自分たちがボールを保持して攻撃するアクションサッカーでしょう。今回のように選手任せの戦術だと、選手の調子の良し悪しに試合結果が左右されてしまう。攻撃のコンセプトを打ち出して4年間で積み上げていかないと、またコスタリカ戦と同じことが起きてしまう可能性が高い。

 選手個々のレベルを上げるのが大前提になるけど、それと同様にチームの強化というか、コンセプトをしっかりと落とし込んでいかないといけないですね。

――そのためには、中軸になる選手を固定していく必要がありますね。

 これからは、カタールW杯でプレーした東京五輪世代が中心になると思います。DFリーダーには冨安(健洋)がなるでしょうし、攻撃陣では本来なら久保(建英)が中心になるべきだと思うんです。でも久保は今回のW杯で輝きを放てなかったので、これからどこまで力をつけていけるか。

 あとは、堂安(律)、三笘、田中(碧)に加えて、パリ五輪世代の選手を入れていくことになると思います。

4年後のW杯でも活躍が期待される堂安律 ©JMPA

――時計の針を戻すなら、どこに戻したいですか。

 クロアチア戦の後半開始から選手交代をして、一気に試合を決めたいですね。2点目を早めに取れていればすごくラクに戦えたと思うし、ベスト8は絶対に行けたと思います。だから、ほんとうに悔しいですよね。僕は、今大会を含めた決勝トーナメントに進出した4大会のなかでも、ベスト16の壁を越える最大のチャンスを逃したと思っています。

(取材・文=佐藤俊)

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