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植毛して変わった私生活

――こうした好調なサイクルに巻き返すことができた秘訣は何だったのでしょう。ご自身の中のどういう変化がきっかけになったと分析していますか。

いしだ 表面的な変化でいえば、植毛したことが一番大きいですけどね(笑)。内面的なことでいえば、僕の場合はいつも女性に支えられていて、これまで何らかの形で関わった関係者や、好意を寄せてくれている女性などに、いろんな面で助けていただいています。とくに娘の存在は僕にとって大きくて、すごく励みになっています。

 

「自分はいしだ壱成」であるという自覚

――つまり、かつての人脈、周囲(女性)のサポート、お子さんの存在が合わさって、現在のように東京でもうひと頑張りする原動力になっている、と。

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いしだ その通りです。そこにもうひとつだけ付け加えるなら、上京する前後でいくつか細かな挫折をした際に、自覚を持ったことも重要だったと思います。

――自覚というのは?

いしだ 自分がいしだ壱成であるという自覚です。しょぼくれた駄目なおじさんではなく、演技で身を立ててきた人間なんだ、ということですね。実際、昔からのファンの方々からは「演技で復活してほしい」という声をたくさんいただいていて、だったら自覚を持たなければ失礼なのではないかと考えるようになりました。

 だから、以前は僕の演技を見た人から「天才ですね」と言われても、「いやあ、そんなことないです」と謙遜していたんですけど、最近は躊躇なく「そうです。ありがとうございます」と答えるようにしているんです。これも役に向き合う覚悟の表れだと思っていただければ。

20代の時のいしだ壱成さん

――お芝居や映画などのオファーが絶たないということでしょうか。

いしだ こちらも、どんな仕事でも優劣をつけずに食らいついてやっていく気持ちでいますからね。ただ、解離性障害とか双極性障害の役柄ばかり来るようになってしまいましたけど。つい先日も、4年ぶりの俳優復帰作となる『TURNING POINT2』という映画がクランクアップしたところなのですが、これも解離性障害+双極性障害+多重人格という役でした。

 でも、これも僕にとって1つのチャレンジで、皆さんはこれからしばらくいろんな壱成を目にする機会が増えると思うんですけど、すべて今後の活動の礎になる経験だと考えています。

 

――現在の肩書きは、やはり「俳優」ということになるのでしょうか。

いしだ いろんな仕事をさせていただいていますが、俳優が一番大きいですね。ただ、この歳になると裏方にも回らなければという思いもあって、中国で映画をプロデュースしたり、舞台の演出をしたり、若手に演技指導をしたり、お陰様で様々なオファーをいただいています。とくに若手の育成は楽しいですね。