『ほんとうの定年後』(坂本貴志 著)講談社現代新書

 老後2000万円問題、年金支給額の引き下げ等、危機感を煽るフレーズを耳にし、定年後の生活に漠然とした不安を抱えている人は多い。しかし実際はどうなのか。

 リクルートワークス研究所のアナリストである著者が、豊富なデータを丹念に読み解き、定年後の実態を浮かび上がらせた本書がヒット中だ。その実態とは、「負担が少なく、難しい人間関係も発生しづらい『小さな仕事』に無理なく従事しながら、日々慎ましくも幸せな生活を送っている姿が高齢期の典型」と、意外にも明るい内容。

「著者は定年後の年収や生活費、労働時間、仕事に関するストレスの状況等のデータを示し、そこから『本当に稼ぐべき額は月10万円』『6割が仕事に満足している』など15の事実を導き出しています。不安を煽られ続けてきた読者に、定年後のポジティブな側面を伝えられたことが、ヒットの一番の要因でしょう」(担当編集者の佐藤慶一さん)

ADVERTISEMENT

 40~50代の男性を中心とする読者の感想は、「不安が解消された」という内容が圧倒的に多いのだそう。

「50代の上司らに話を聞くと、現役時代のプライドを捨てて小さな仕事をしている自分の姿が想像できない、という声が目立ちました。そこで、定年後の就業者の事例も複数盛り込みました。自分のプライドと折り合いをつける手助けになると思います」(佐藤さん)

2022年8月発売。初版1万部。現在9刷8万4000部(電子含む)