他局は“年功序列型” テレ東は“熱量主義”
──ドラマプロデューサーというと花形の仕事に思えますが、皆さんも組織に所属する会社員の一人ですよね。
ときには会社の歯車的な役割を担うこともあると思いますが、自分の個性を生かしつつ、会社員として自己実現する秘訣はありますか。
本間 私は6年間、派遣社員でした。非正規雇用だったときは、会社の歯車というよりも、”社会の歯車”になっている感覚が強かったです。今年から正社員になったので、会社の歯車としての仕事、その中でどう自己実現するかは、新しい課題だと思っています。
祖父江 私は入社14年目なんですが、会社員なので、やはり「組織のために」という理由でやらねばならない仕事は、たくさんあるんですよ。
その一方、テレ東はトップダウンで全てが決まるわけではないし、年功序列で企画が通りやすい会社でもないと思います。
濱谷 テレ東で企画を通すのは、個々の熱量次第かもしれないよね。
本当に自分がやりたいことを企画したり、危機感を持ってたくさん企画を出す人ほど、通っている気がします。僕は「ドラマ作らないまま30代になっちゃう!」「ヒットを出さないまま40代になっちゃう!」とか、いつも焦ってきました(笑)。
祖父江 同業他局の人から「年齢が40半ばを過ぎると、実績がなくても、自動的にプロデューサーになれる」という話を聞いたことがあります。テレ東では、それは絶対にないです。
濱谷 ないよね。
祖父江 その代わり、やる気があれば、若くても自分の企画を出せる環境ですね。それは大きいと思います。企画が通るかは、また別問題なんですけど(笑)。
ゆるふわ、キュン系ではなくアングラ系に方向転換
──松本さんはいかがですか。
松本 社内では最近、ドラマの企画募集要項に《女性向けの恋愛もの》とか書いてあるんですよ。3年前ぐらいは《ギャンブルもの》などもあったのに、それが一気になくなって……。で、「無理だ、俺には恋愛ものの引き出しはない」と思って、ちょっと落ち込んだんですよ。
祖父江 そうだったの?
松本 内心「どうしよう」と焦ってました(笑)。でも、企画は何か出したい。そしたらもう、《恋愛もの》を自分なりの切り口で考えるしかなくて。
そこで僕は、ゆるふわラブコメやキュンキュン系ではなく、思い切り人間の中身をえぐるアンダーグラウンド方向に舵を切り替えることにしました。それが、恋愛かサスペンスかグロなのかわからない『ただ離婚してないだけ』(2021)です。
──Kis-My-Ft2の北山宏光さんが“怪演”と話題になったドラマですね。
松本 ええ。その延長で、人生に絶望した男とセレブ妻が出会う『雪女と蟹を食う』(2022)を作りました。これは、祖父江さんにチーフプロデューサーに入っていただいて。
ただ、僕はもう恋愛ものはやらないと思います(笑)。祖父江さんや本間さんなど、女性が作った方が世間のニーズに合うと思いますから。僕としてはもう一度、ギャンブルものを作りたいし、自分が大学時代に経験した応援団のドラマもやってみたい。恋愛ものが人気の一方で、そういう作品の需要もきっとあると思っています。