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「『チェリまほ』は派遣社員のままプロデューサーに」「異動したくて勝手にドラマをつくった」テレ東P4人が明かす《ヒットを連発する自由すぎる社風》

テレビ東京プロデューサー座談会#1

 豊富なジャンルと、他局にないニッチな切り口──ドラマ玄人たちがこよなく愛するテレビ局が「テレ東」だ。

 テレビ東京は2000年代までは“経済番組とアニメの局”という印象が強かったが、2010年代以降は大ヒット作『モテキ』(2010)や『孤独のグルメ』シリーズ(2012~)をはじめ、映画化もされた『きのう何食べた?』(2019)、豪華キャストの低予算ファンタジー『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011~)、オッサンがサウナに入るだけの『サ道』(2019)など、話題に事欠かない作品がそろう。 

©文藝春秋

 これらのドラマを統括するのが「プロデューサー」たち。テレビ東京は他のキー局に比べると規模も制作費もコンパクトといわれるが、彼らはクリエイターとして才能を存分に発揮し、かつ会社員として働いている。 

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 なぜテレビ東京を選んだのか。どのような視点でドラマを作りだすのか。男女プロデューサー4人に、異才を放つドラマ作りの秘密を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む) 

座談会メンバー

 

濱谷晃一 テレビ東京制作局ドラマ室プロデューサー。1977年生まれ、2001年入社。12年間バラエティに携わった後、2012年ドラマ室に異動。現在はテレ東以外でも作品をプロデュースしている。代表作は『スナックキズツキ』(2021)、『バイプレイヤーズ』シリーズ(2017~)、『アノニマス』(2021)『コタキ兄弟と四苦八苦』(2020)、『フルーツ宅配便』(2019)など。

 

祖父江里奈 テレビ東京制作局ドラマ室プロデューサー。1984年生まれ、2008年入社。10年間バラエティに携わった後、2018年にドラマ室に異動。代表作は『来世ではちゃんとします』(2020、2021)、『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』(2020)、『だから私はメイクする』(2020)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(2021)など。

 

松本拓 テレビ東京配信ビジネス局。1984年生まれ、2009年入社。5年半営業に携わった後、2014年にドラマ室に異動。2021年より配信ビジネス局に異動。代表作は『銀と金』(2017)、『警視庁ゼロ係』シリーズ(2016~)、『晩酌の流儀』(2022)、『ゲキカラドウ』(2021)、『ただ離婚してないだけ』(2021)、『雪女と蟹を食う』(2022)など。

 

本間かなみ テレビ東京制作局ドラマ室プロデューサー。1990年生まれ、2016年から派遣社員としてテレビ東京に勤務、2022年入社。派遣社員ながら初企画・初プロデュースした『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(略称・『チェリまほ』)』(2020)は海外でも人気を博す大ヒット作に。他に『うきわ-友達以上、不倫未満-』(2021)など。

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ドラマがやりたくてテレ東に入社

──ドラマ好きの中ではここ数年来、「テレ東が攻めてて面白い!」と話題です。今日お集まりいただいた4人の皆さんには、プロデューサー業についてさまざまなお話を伺います。まずは、皆さんがテレビ東京に入社した理由をお聞かせください。

祖父江里奈(以下 祖父江) 私は学生時代からドラマ制作志望だったんですが、テレ東以外のキー局は全て、一次面接で落ちまして。それでテレ東に入社後、バラエティ畑でADなどをするうち、気づけば10年経っていました。

濱谷晃一(以下 濱谷) 僕も学生時代から映画や演劇が好きで、当時は広告代理店に入ってCMプランナーになりたいと思ってたんです。でも、テレビ局のほうが試験日程が早かったので、力試しに受けたら、テレビ東京に内定をもらいました。「だったら、ドラマの監督をテレビ東京でやろう!」と。

 ただ、僕が入った2001年当時は、テレビ東京にほとんどドラマがなくて……実はこの会社についてよく知らないまま試験を受けたので、それを知ったのは入社後でした(笑)。それで、12年くらいバラエティに携わりました。

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