「完全手探り」マニュアルなしのドラマ作り
濱谷 だからみんな、初めは完全に手探りですよね。誰かの下について研鑽を積んだとか、聞いたことがない。
松本 祖父江さんが異動してすぐ、一緒に飲みに行ったんですよね。
祖父江 そうそう。松本くんは私の1期下なんですが、2014年からドラマ室にいるので、プロデューサーとしては先輩なんですよ。
その飲みの席で、「ドラマ室では基本的に、仕事は教えてもらえない。頑張って会得していくしかないよ」と言われたのが印象的で(笑)。
濱谷 実際、ドラマの作り方って、マニュアルがないもんね。
祖父江 そうなんですよ。だから、困ったら濱谷さんか松本くん、あとは阿部真士さん(『モテキ』2010、『孤独のグルメ』シリーズ2012~などのプロデューサー。現在は配信ビジネスセンター所属)など、信頼できる先輩にその都度ひとつひとつ聞いていました。
「テレ東は外注に一任してくれる」とほめられたけど…
濱谷 僕がドラマ室に異動したのは2012年末です。当時は大根仁さん演出の『モテキ』(2010)や、福田雄一さん監督の『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011~)などの話題作が続き、「テレ東の深夜ドラマは面白い」と言われ始めた頃でした。
ただ、うれしい半面、僕にとってショックなこともありまして。
──どういうことでしょう?
濱谷 ほめ言葉の中には、「テレビ東京のプロデューサーは内容に口を出さず、外の人に任せてくれる。これは他局ではあり得ないからすごい」というのもあって。
つまり、“テレビ東京発で企画を立てたり、内容を主導しているのではなく、外注に頼っている”ということです。これを面と向かって言われるのは寂しいな……と思ったんですよ。
──大根さんも福田さんも、外部の方ですもんね。
濱谷 優秀な外部クリエイターと組むのは大歓迎ですが、自分もそういう企画をしっかりプロデュースしたいという思いがありました。その頃に比べると今は、この場にいる3人をはじめ、自分発の企画やプロデュースで面白いドラマを作れる人が増えていますね。
松本 僕は、外部からの持ち込み企画に“お飾りプロデューサー”として名前がクレジットされるのは、すごくダサいと思っちゃうんですよ。
──松本さんは、実際にそういう経験をしたのですか?
松本 もちろんありますが、基本的に僕は性格上、無理ですかね。自分で企画して自分の子供として作品を作らないと、作品に対して責任が持てないです。
実際の制作過程では、各所への根回し、キャスティング、台本の打ち合わせ、リハーサルや撮影現場の立ち合い、編集などがあり、30分のドラマを作るだけでもすごく時間がかかります。立ち上げからクランクアップまで120%、150%の気力を注ぎ込むわけですから、外部の持ち込みじゃなく、自分自身の企画でやりたいんですよね。