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「完全手探り」マニュアルなしのドラマ作り

濱谷 だからみんな、初めは完全に手探りですよね。誰かの下について研鑽を積んだとか、聞いたことがない。

松本 祖父江さんが異動してすぐ、一緒に飲みに行ったんですよね。

祖父江 そうそう。松本くんは私の1期下なんですが、2014年からドラマ室にいるので、プロデューサーとしては先輩なんですよ。

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 その飲みの席で、「ドラマ室では基本的に、仕事は教えてもらえない。頑張って会得していくしかないよ」と言われたのが印象的で(笑)。

濱谷 実際、ドラマの作り方って、マニュアルがないもんね。

©iStock.com

祖父江 そうなんですよ。だから、困ったら濱谷さんか松本くん、あとは阿部真士さん(『モテキ』2010、『孤独のグルメ』シリーズ2012~などのプロデューサー。現在は配信ビジネスセンター所属)など、信頼できる先輩にその都度ひとつひとつ聞いていました。

「テレ東は外注に一任してくれる」とほめられたけど…

濱谷 僕がドラマ室に異動したのは2012年末です。当時は大根仁さん演出の『モテキ』(2010)や、福田雄一さん監督の『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011~)などの話題作が続き、「テレ東の深夜ドラマは面白い」と言われ始めた頃でした。

 ただ、うれしい半面、僕にとってショックなこともありまして。

──どういうことでしょう?

濱谷 ほめ言葉の中には、「テレビ東京のプロデューサーは内容に口を出さず、外の人に任せてくれる。これは他局ではあり得ないからすごい」というのもあって。

 つまり、“テレビ東京発で企画を立てたり、内容を主導しているのではなく、外注に頼っている”ということです。これを面と向かって言われるのは寂しいな……と思ったんですよ。

濱谷さんがアソシエイトプロデューサーとして携わった、2022年12月24日から有料配信サービス「Paravi」で配信がスタートした新ドラマ『ギルガメッシュFight』。「懇意の作家さんからギルガメドラマ化の相談を受けて立ち上げに関わりました。後輩の工藤里紗Pや先輩の田中智子Pに託させていただいたのですが、工藤Pが大変な思いをしながら完成までこぎつけたと聞いています(汗)」(濱谷さん) ©テレビ東京

──大根さんも福田さんも、外部の方ですもんね。

濱谷 優秀な外部クリエイターと組むのは大歓迎ですが、自分もそういう企画をしっかりプロデュースしたいという思いがありました。その頃に比べると今は、この場にいる3人をはじめ、自分発の企画やプロデュースで面白いドラマを作れる人が増えていますね。

松本 僕は、外部からの持ち込み企画に“お飾りプロデューサー”として名前がクレジットされるのは、すごくダサいと思っちゃうんですよ。

──松本さんは、実際にそういう経験をしたのですか?

松本 もちろんありますが、基本的に僕は性格上、無理ですかね。自分で企画して自分の子供として作品を作らないと、作品に対して責任が持てないです。

 実際の制作過程では、各所への根回し、キャスティング、台本の打ち合わせ、リハーサルや撮影現場の立ち合い、編集などがあり、30分のドラマを作るだけでもすごく時間がかかります。立ち上げからクランクアップまで120%、150%の気力を注ぎ込むわけですから、外部の持ち込みじゃなく、自分自身の企画でやりたいんですよね。