全日本プロレスで活躍する史上最強の双子プロレスラー、斉藤ジュン(兄)と斉藤レイ(弟)によるユニット“斉藤ブラザーズ”を知っているだろうか?

 ともに身長190cm超、合計体重約250kgの圧倒的なフィジカルを武器に、2021年のデビュー直後から頭角を現し、世界タッグ王座戴冠、プロレス大賞新人賞・最優秀タッグ賞受賞など、マット界を席巻している。

 だが、その道のりは順風満帆ではない。大相撲出羽海部屋の力士として入門するも夢破れ、30歳で廃業。兄・ジュンはアラスカでトラック運転手を目指し、弟・レイは自分たちの生きるべき道を模索していた。“斉藤ブラザーズ”の夜明け前。決してそれは明るいものではなかった。(全3回の2回目/続きを読む)

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兄の斉藤ジュンさん(左)と弟の斉藤レイさん(右) ©杉山秀樹/文藝春秋

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今度は兄弟で出羽海部屋の門を叩いた

――レイ選手が一旦後にした出羽海部屋に、どうして2人揃って入門することになったのか教えてください。

ジュン アメリカから帰国後、自分は埼玉の川越の方にあるK-1選手を輩出しているムエタイ式のキックボクシングジムの寮生としてトレーニングをしていました。練習に食らいつくことはできたんですけど、自分は体が大きかったので減量がとにかくきつかった。トレーニングをするにしても、食べないで続けることに限界を感じていて。そんなときに弟から、2人で相撲をやってみないかと誘われたんですね。母親が相撲好きだったこともあり、自分も相撲が好きでした。おまけに、相撲なら強くなるために過度な減量をすることはない。気持ちをゼロにして、イチからやってみようと思ったんですよね。

レイ 一度実家に帰ってきたものの、やっぱり相撲をやりたいという気持ちが強くて。最初から、そのまま続けてろよって話なんですけど、ジュンを誘ってもう一度正式に入門しようと。先輩力士には驚かれました。一度帰った奴が、2人になって戻ってきたぞって(笑)。

青空の下でポーズを決めてくれたジュンさん(左)とレイさん(右)

――相撲部屋は関取(十両以上)にならないと、プライベートな時間や空間が限られます。大部屋で共同生活を送ることが基本ですが、そうした環境は苦ではなかったのですか?

ジュン プライベートはもちろんなかったですけど、全然苦ではなかったですね。

レイ 言葉が通じない中でもコミュニケーションを取る必要があったハイスクール時代の経験が生きているというか。団体の中で生活することはアメリカでもやっていたことなので、自分も嫌ではなかったですね。