また、公立小学校全般というより、指定された通学区域の公立小学校に対するリアルな不満・不信を示している家庭もある。
学区の公立小学校でも、高学年で学級崩壊があると聞き、小学校受験を考えました。学区の小学校から歩いて行ける範囲に学童保育所が1つもないことも、公立小学校へ通わせたくない理由の一つになっています。
幼児教室担当者のインタビューからも、以下のように、指定された通学区域の公立小学校に対する不満を示す家庭の姿がうかがえる。
「校区があまりよくないので」とかありますよね。「小学校受験がうまくいかなかったら、校区のいいところへ引っ越すんです」という方もいます。(校区によって、公立小は)すごく格差があると思います。
2007(平成19)年度から実施されている「全国学力・学習状況調査」では、毎年、公立小学校での平均正答率の低さが示されている。近年、公立小学校で学習指導にあたる教員の採用倍率の低さや教員不足(「臨時」頼み)の実態も報じられている。さらに、コロナ禍における公立小学校の対応の遅れも指摘されている。こうした状況を背景に、近年の公立小学校への不満は、「漠然としたイメージによる感覚的な不安」から「根拠に基づく可視的でより明確な不信」に近いものとなっているのではなかろうか。
(3)「受験する」ことに対する明確な目的や方針
第三に、「小学校を『受験する』ことに対する明確な目的や方針をもっている」という傾向である。
片山かおるは、『お受験』で、小学校を受験する家庭のタイプを、親子代々、小学校から一貫して私立校に通い、私立・国立以外は考えられないという「老舗組」、たまたま友人たちから情報を耳にし、受験を薦められるなどする中でその気になる「たまたま組」、子どもの教育に非常に熱心で、学歴にも敏感な「まっしぐら組」に分類している。
図3-17からは、「ただなんとなく」「有名人の子弟が小学校受験をしているから」といったあいまいな理由の該当率は極めて低く(それぞれ全体の2.2%、0.4%)、「他者の薦め」因子として抽出された「親類・友人に薦められたから」「幼児教室や幼稚園・保育園の先生に薦められたから」の該当率も低いことから(それぞれ全体の18.8%、8.7%)、現代の小学校受験家庭、特に幼児教室で受験対策をしているような家庭には、「たまたま組」は少ないことがわかる。