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 私立小学校では、文部科学省が決定する各学年の指導要領を最低限守っているものの、実際にはその小学校の教職員、理事会などによって決定された方針のもと、それぞれの学校の特色を出した初等教育が行われている。多くの私立小学校では、個々の学校のもつ歴史や伝統に基づく確固たる教育方針を受け継いでいる。こうした特定の学校の特色ある教育を享受すべく、我が子を私立小学校に進学させる家庭は戦前からみられたものである。

 しかし幼児教室担当者のインタビューでは、以下のように、特定の志望校にこだわらない家庭の存在やそのような家庭の増加について耳にすることも多かった。

 10月に2校、11月に2・3校ほど私立小を出願して、結果が思うようにいかなければ国立小という感じの方もいます。関係者や卒業生といった方以外は、5・6校受けるのはよくあることです。

・「国立」という響きと「私立」という響きのどちらをとるかっていうと、「国立」を選ぶ方がいらっしゃるので、(もともと志望していた)私立小学校に受かっていても、合格したら国立小学校に行く方もいます。

・目移りされるというか、直前になって、あれこれあれこれ。例えば、(日本女子大学附属)豊明小学校、学習院、東洋英和、雙葉と横に並べて志望校を書いてくるような親が徐々に増えてきたというような。以前なら、このように全く校風の違う学校を志望することは考えられなかったのですけど。

 これらの特徴を考え合わせると、現代の小学校受験家庭では、我が子の教育環境を重視し、小学校を「受験する」ことには明確な目的や方針をもつ一方で、特定の志望校に対するこだわりは少ない家庭も珍しくないといえるだろう。

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調査概要

・実施時期: 2009年6月中旬から7月中旬(一部の対象者は2010年1月)

・調査対象: 国私立小学校を受験予定の年長児をもち、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)および関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県)に在住する家庭1667件。

 有効回答数297件(有効回答率17.8%)。回答者の56.6%が「私立小学校のみ」、29.5%が「国立・私立小学校を併願」、13.9%が「国立小学校のみ」を受験予定。

・調査方法: 小学校受験を目的とする幼児教室5校(10教室)を通して、質問紙および返送用封筒を配布し、後日、幼児教室を経由せずに、直接、返送するよう依頼した。

図版作成:キンダイ