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「受験がうまくいかなかったら引っ越すんです」過熱する小学校受験戦争の裏で親が明かした“本音”とは

『小学校受験 現代日本の「教育する家族」』より #2

2022/12/16

genre : ライフ, 教育, 読書

note

 また「国立・私立小学校にご両親(いずれかでも)も通っていたから」の該当率もおよそ2割(全体の20.8%)に過ぎず、「老舗組」も多いとはいえない。

 こうした傾向をふまえると、「まっしぐら組」、すなわち、以下の自由記述にみられるように、我が子の教育に強い関心と責任をもち、明確な目的や方針のもとで受験に取り組むような「教育する家族」の参入が、現代の小学校受験を過熱させているといえるだろう。

 小学校だからこそ、子どもを安心してお願いできる環境や先生にこだわりたい(自分たちで選択したい)。「ここに住んでいるのだから、この小学校に行きなさい」とこちらの意思に関係なく割り振られた公立小学校に子どもを行かせると、後々、後悔する気がする。仕事の関係上、転居はできないので、国立小と私立小を受験することにした。

(私たちは公立小学校出身ですが、)せめて私たちが受けてきた水準の教育カリキュラムを受けさせてあげたい。しっかりとした「先生」と呼べる教師の下で教育を受けさせたい。その思いを実現させるためには、揺るぎない教育方針と、育成目標を持った小学校を求めざるを得ない。

(4)特定の志望校へのこだわりの少なさ

 第四に、「特定の志望校へのこだわりは少ない」という傾向である。

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 図3-17からは、特定の小学校しか受験しないとは限らないが、「進学を希望する特定の小学校があるから」という理由で小学校を「受験する」家庭が8割を超えている(全体の83.0%)ことがわかる。私立小学校が近隣に複数ある地域でも、幼児教室担当者によれば「ガクセタ(=学芸大学附属世田谷小学校)狙いって人は多いですよ。だめだったら公立で、そこしか受けない」といった国立小学校専願の家庭は珍しくないという。

 しかし、およそ2割(全体の17.0%)の家庭では「進学を希望する特定の小学校があるから」小学校受験をするわけではないともいえるだろう。