俳優志望の男が偶然拾った航空券を交番に届けたら、落とし主は芸能事務所の社長だった――。俳優・松尾諭さんが自身の半生を元に綴ったエッセイ『拾われた男』のドラマ版(NHK総合 火曜 22:00~22:45)が12月13日、最終回を迎える。松尾さんにドラマへの思いを聞いた。

松尾諭さん

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――NHKで放送中のドラマ『拾われた男』、いよいよ最終回ですね。

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 この一年は僕にとって『拾われた男』の年で、ドラマが撮影に入った時くらいからずっとソワソワしていました。最終回近くなって、ようやく落ち着いてきましたね。ドラマ化されると決まって、監督の井上(剛)さんと脚本の足立(紳)さんに、原作をいくらでもこねくり回してくださいと言ったんです。

 ドラマの第1話を見るまでは、どうこねくり回されているのか期待と不安が入り混じっていたのですが、見たら予想以上に面白くて、想像の何倍も素晴らしい作品になっていた。(仲野)太賀君を初めとして力量のある出演者の人たちばかりですし、自分が関わっているとか関係なく、稀に見る名作になったんじゃないかなと思います。

 ディズニープラスで配信されて、NHKでも放送されて反応もたくさんいただくんですが、ドラマが100パーセント僕の話やと思ってる人もいるみたいで。予想はしていましたけど、それはちょっと違うんやけどな、というのが嬉しい弊害でもあります。

仲野太賀さんは「すごく僕っぽい」

――松尾諭ならぬ「松戸諭」を演じられた仲野太賀さんを見て、いかがでしたか。

拾われた男』(文春文庫)

 見ている人からすごく僕っぽいって言われますね。撮影現場で見ていたときとか、俺そんなんちゃうけどなって思っていたんですけど、実際にドラマを見ると確かにこの感じあるなって思うところもありました。太賀君が僕のことをすごく研究したとは聞いてないし、僕に寄せる必要はないって直接伝えてもいるので思い切って演じてくれたんだと思いますけど、結果として似てると言われるのは面白いですね。ただ、太賀君は体重を10キロぐらい増やしたんで、ちょっと太ったらみんな僕みたいになるんじゃないかっていう(笑)。

 彼自身の演技ももちろんすごいんですが、共演者の人たちが太賀君と芝居するのが楽しそうなんですよ。ドラマを見ていても思うし、実際に薬師丸(ひろ子)さんも井川(遥)さんも(伊藤)沙莉も、みんなそう言っていた。それはやっぱり彼の才能だなと。彼以外、演じられる人はいなかったんじゃないかと、終わってみて思いますね。