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妻が「泣きすぎてしんどかった」と言った2作目

――2作目の『フラッパー』も刊行されたばかりですね。

フラッパー』(文藝春秋)

『拾われた男』を書いて、もう出し切ったなと思っていたのですが、書きませんかとお話をいただいて。無理無理と言ったんですが、せっかくもらったチャンスなので歩みを止めてはいけないんじゃないかと、40も後半になったので余計にそう思って書くことにしました。

『拾われた男』効果もあったと思うんですが、すごく忙しくなったので、書いている最後の方は頭と身体がもう逼迫している状態でしたね。もう書けないと心が折れそうになっていたのですが、監督の井上さんに「あんまり考え過ぎなくていいんじゃない?」と言われました。その言葉は、拾われた男の最終回の編集で悩まれていた時に僕が言ったのですが、そもそもは、井上さんと初めて仕事をした時に、あまり考えずに撮ったら出来が良かったと仰っていたのを思い出して言った言葉です。その言葉をまた聞いて、もうああだこうだ考えずに、腹を括って投げ切ろう、腕を振り抜こう、という気持ちで書きました。

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 今回は書き下ろしということもあり、面白く書けているのか不安でした。妻にさえ面白いと言ってもらえればと思っていたんですが、妻は泣きすぎてしんどかったと言ってくれて。妻は涙腺が緩すぎるんで、そんなにアテにはできないんですが(笑)。ただ、表紙のイラストは自信作で、よく褒めてもらえます。『拾われた男』はエッセイなので、小説の『フラッパー』とは全然違うのですが、実は繋がっているところもある。なのでどちらも読んでいただけると嬉しいです。

拾われた男 (文春文庫)

松尾 諭

文藝春秋

2022年6月7日 発売

フラッパー

松尾 諭

文藝春秋

2022年11月28日 発売